新連載 第一回 「他人のポエムを超えてゆけ」

 

私には人生経験が少ない。

年齢という絶対値において本来社会に触れているべき時間も圧倒的に少ない。

たまにぶつかる人間として求められているであろうレスポンスも、表明も態度も行動も、年齢相応に取れず、人間的成長も進まず、ただ家の中でグズグズとしている。

 

なので部屋いながらせめて外界、そして他人にも触れようと人の声を求め、ラジオを聴いている。

 

なかでも人生相談番組は、本来ならばしっかりと対人コミュニケーションをとった経験無しでは覗くことのできない人々の内部の思考、感情がみえたようで、高ポイントのイベントに遭遇したような感覚を与えてくれる。放課後の屋上が、誰もいない教室が、部室が、給湯室が、会議室が、居酒屋がみえてくるみたいだ。ここ居間だけど。

 

家でひとりラジオを聴きながら「ああ…人間…ヒューマンよ…おお…」と電波越しに人里をのぞいてる私はまるで青鬼のいない赤鬼だ。里に降りてもこねえ。お菓子もねえ。

 

人生相談番組のなかでも、ハガキやメール投稿ではなく、電話で本人からダイレクトに話を聞くタイプの人生相談は高エネルギー体との遭遇だ。アナウンサーやパーソナリティーといったプロの人たちの、洗練、かつほどよく調整された耳障りの良い音声とは違って、色味でいえばドス黒い系の「悩み」を抱えて袋小路となった人間の声は、欲望に忠実すぎて、当たってしまったらまるで交通事故だ。聞いてるこちらの対人間ストレス耐性もそもそも落ちているから、生々しい肉声を聞くのはリハビリのような感覚にもなる。事故だけに。

 

そして今までいかに人間の肉体の声を聞いてこなかったか打ちのめされたあの日のショックをわすれない。

聞いてほしい。

 

 

「一緒にズタズタになろう」

 

 

夫の浮気を夫直筆ポエムで知ってしまった妻からの相談だった。

動かぬ証拠がポエム、そんな人生イベントある???????

夫の不義を知り心がどよめいてしょうがない妻に、そのポエムを読み上げさせるパーソナリティ。

鬼か(さっきの赤鬼を彷彿とさせてみた)。

 

 

夫のカバンの中から発見してしまったポエム。

人生でポエムって言ったことも書いたこともないからなんとなく記念に反復してしまうけどポエム。

何度でも書きたいぞ書かせてくれポエム。ポエムゥ。

そしてクドくも再掲になるが

 

 

 

「一緒にズタズタになろう」

 

 

 

一旦、私がつくったかわいらしい子犬の手芸作品をみて落ち着いて欲しい。

 

羊毛フェルトでできています。

 

 

 

…どう?落ち着いた?呼吸は整った?オーケイ、次のポエムに行こうか。

 

 

「どうして出会ってしまったんだろう」

 

 

恋は盲目っていうけど恋情って人間からオリジナリティのカケラすらも奪ってしまうの…???????

 

 

 

「何故ここで出会ってしまったのだろう」

どこで??????????????

 

 

 

「いくところまでいこう」

どこに??????????????

 

 

 

素人の、投稿暦(どこにだ)もない熟年世代の男女の不倫クソポエトリーリーディングをなぜ、被害者たる妻越しに、私はこの真昼間から聞いてるんですか????何次被害ですかこれ??????

混乱しているなか、プロたる回答者が言うんですよ。

 

 

「あら、素敵な男性じゃない?」

 

 

人はギャラリーがいなくても真顔になれる。無の顔になれる。なってた。

まったく追いつけないし混乱のさなかにいる人生相談聴きたてのかわいいひよこちゃん(私)に回答者はその浮気クソポエム(すいません抑えられなくて本当にすいません)に対して、

 

 

「旦那さんは素敵な愛を持っていますね?」

 

 

「自分の心を整理するために書いたんです」

 

 

と答え、奥さんは全て許して、絶対に詰めてはいけません、そうすれば。

 

 

「夫が気付いたとき優しさに変わる」

 

 

 

もう自分の生きて来た世界と時間と経験と価値観が大崩落。

当時私が残していたメモにはこう残っています。

 

 

「心のマグマがまだ冷えない」

 

 

ほんっっっっとに社会のリハビリしようと思って聴いたしょっぱなの刷り込みがすごすぎてここからほぼ毎日聴いて、メモを取る習慣がついてしまった。

 

文体が滅裂なのはそれほどの壊滅的ゆさぶりがあったこととして理解してほしい。

ほんとに一人では受け止めきれない。

できれば皆さんも聞いてほしい。

本放送で聞いてほしい。

仲間がほしい。

それまで私はこの世界を、学びを、伝えゆきたい…次回もよろしくお願いいたします。