第六回 男子高生にとっては、大食い=勇者なのだ

 

 

■脳を使っている囲碁・将棋部が一番食べられるハズ!?

 

前回は、男子高生の間で大激論になりがちな「○○ちゃんのウンコを食えるか? 食えないか?」問題を紹介させて頂いたが、今回も引き続き「食えるか? 食えないか?」問題。

 

バカな男子高生はウンコ以外にも、何かと「オレは○○を食える!」マウンティングを取りがちだ。

 

分かりやすいところでいうと、大食いチャレンジ物。

 

「別に運動をするわけでもないのに、やたらと量を食う」タイプの人間は、食料難の原始社会においては害悪でしかないが、「余計なことをすればするほどエライ」男子高社会では尊敬の対象となり得る。

 

当時、学校の近くにあったカレー屋が「20分以内に2キログラムのカレーを食べきったら5000円」というチャレンジ・メニューを開始した(失敗すると2000円くらい取られる)。

 

「2キログラムのカレー」は、両手で抱えるほどの巨大な皿に、半分はこんもりとそびえ立つライス、半分は海のように広がるカレーという、なかなかに衝撃的なルックスで、食べ盛りの男子高校生とはいえ、おいそれとは食べられる量ではない。

 

実際に、何人かの運動部員が挑んだもののあえなく撃沈。成功者は、賞金を受け取った上、ポラロイド写真を撮られて店頭に貼り出されるという副賞付きだったのだが、我が校の生徒の写真は、まだ一人も貼り出されていなかったのだ。

 

そんな難攻不落のチャレンジ・メニューに挑戦状を叩きつけたのが囲碁・将棋部のI。

 

確かに小太りで、そこそこ食いそうなビジュアルをしているIだったが、大食い自慢の運動部員ですらムリだった量を、ザ・文化部である囲碁・将棋部員が食えるわけがないだろうと誰しもが思っていた。

 

しかしIの理屈では、

 

「人間の身体の中で一番カロリーを消費する臓器は脳。普段、囲碁・将棋で脳をフル回転させているボクが一番食べられるハズ」

 

ということらしい。

 

 

■2キロ・カレーへの挑戦後は、カレー・リゾットが登場

 

運動部員が蹴散らされたチャレンジ・メニューを、ボクら文化系地味チームのメンバーがクリアしたら快挙。

 

……ということで応援半分、無様に失敗する様をニヤニヤ眺めようという気持ち半分くらいの感じで、友人たちとIのチャレンジを観戦しに行った。

 

目の当たりにした2キロ・カレーは、写真で見るよりも圧倒的なボリュームで、「見ただけで食欲失せるわ!」という威圧感を放っている。しかし、Iの「脳を使っているから食えるはず」理論は予想以上にスゴかった。

 

序盤から、かなりのハイペースでグイグイとカレーが体内に吸い込まれていく。まさに「カレーは飲み物」状態だ。

 

さすがに中盤以降は苦しそうな表情を浮かべていたが、スプーンを持つ手を止めることなく、コンスタントにカレーを運び続ける。

 

「あともうちょっと! いける! いける! がんばれッ!」

 

完全に無理だと思われていたIの、予想外の健闘に、店員や他のお客さんたちも巻き込んで熱い声援を贈ってしまう。

 

Iの顔は赤から青、最終的には緑がかった土気色というヤバイ顔色となっていたが、スプーンは止まらない。

 

「あと2口……1口……!」

 

遂に、最後の1口を口の中に収めた。

 

「ウオオオーっ!」

「スゲエ!」

「おめでとうございます! ○○高校生でははじめてのクリアですよ!」

 

高校3年間でもっともテンションが上がった瞬間かも知れない。まだ、ほおをパンパンにしているIは、一言も発しないが満面の笑顔だ。

 

2キロ・カレーに打ち勝った勇者の姿を記録すべく、ポライドカメラを取りに店の奥に向かう店員。

 

関係のないお客さんたちからも拍手喝采を受け、ハートフルな空気に包まれる店内。

 

……と、思った瞬間。

 

ウビャビャビャビャーッ!

 

湿った下痢便のような、絞め殺される獣のような奇音を発しながら、Iの口からは、さきほどまで格闘していたブツが逆噴射。

 

ビデオを逆再生しているかのように、吐瀉物はキッチリ巨大皿に収まっていく。

 

内容物を吹き出すにつれ、Iの顔色は土色→緑→青→赤→肌色……と、元に戻っていくのが興味深く、ついつい凝視してしまう。

 

やがて巨大な皿の上には、「こんどは2キロのカレー・リゾットに挑戦するのかな?」というくらい、キレイに全量が収まっていた。

 

あまりの出来事に、ボクらも、他のお客さんたちも「あ……」と言うことしかできなかった。ポラロイドカメラを持って戻ってきた笑顔の店員の、

 

「あ、出ちゃいましたね」

 

という妙に冷静な言葉が、今でも記憶に強く残っている(よくあることなのか!?)。

 

一度、口の中に全部収めたからチャレンジクリアーという扱いになったのか、その後、全部出しちゃったから失敗だったのかよく覚えていないのだけれど、成功者は空になった皿を持ってニカッと笑顔でポラロイドに収まるのがお約束。

 

自家製カレー・リゾット満載の皿を持ってニコパチしたとも思えないので、まあ失敗扱いだったのだろう。

 

 

 

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