第八回 男女関係は、「いい雰囲気」を出し合うことから始まる

 

タイミング論はあまりにも男性目線ではないでしょうか?

 

恋人や配偶者を求める男性に必要なのは「女性が恋愛したいタイミング」を見極めて果敢に行動することである――。このような仮説を掲げている本連載。多くの男性から好かれそうな気立てのいい美人を筆者の主観で選び、インタビュー取材をさせてもらっている。この仮説に対して、楽しそうに反論してくれるのは都内の企業で高度専門職として働いているサヤカさん(36歳)だ。

「あまりにも男性目線じゃないでしょうか。女性の生理サイクルなどを気にしてくれるのは確かにありがたいです。私は以前に生理中でも(セックスを)求めてくる男性と付き合っていて、断れずに嫌な思いをしたことがありますから。でも、恋愛にはタイミングがあるのは男性も同じはず。いつだって誰だって受け入れOKなわけではないでしょう? だから、お互いがちょうどいいタイミングを探すのは難しいと思います」

サヤカさんによれば、男女関係の始まりとはタイミングを探り合うものではない。それは「いい雰囲気を出し合う」ものだ。

「この人ともっと話したいな、と思うときがありますよね。LINEを交換してやり取りが弾めば、『彼も私のことを気に入ってくれているんだな』と判断できます。それが『いい雰囲気』です」

恋愛とは男女がそれぞれ「雰囲気」を出し合うもの――。的確で美しい表現である。サヤカさんのおかげで、筆者は以前の恋人のことを思い出した。まだ恋愛関係ではなかった頃、1週間後には食事をともにすることが決まっていたのに、なんとなく声が聞きたくて電話をしたことがあった。彼女は家族と食事中だったが、笑いながら「ちょっと待ってね。自分の部屋からかけ直すから」と言ってくれた。何を話したのかは覚えていないが、1時間ほど夢中で話した記憶がある。彼女の愉快そうな声とともに。

あの電話で筆者は「あなたのことが好きだ」という雰囲気を出したのだろう。彼女はそれを楽しげに受け止めてくれた気がする。次のデートの帰りがけに手をつなぎ、彼女はそのまま筆者のアパートに来てくれた。無理のない流れだったと思う。それがいまの妻である。

 

相手を見て気遣っていれば、恋愛のタイミングは自然とできる

 

「まさにそれですよ。タイミングよりも、相手が誰なのかが大事なんです。もしも彼女が大宮さんのことを何とも思っていなかったら、長電話はせずに手短に済ませたでしょう」

嬉しそうに言葉を添えてくれるサヤカさんと話していると、また別の女性との最近の出来事を思い出した。ダイニングバーを経営している女性で、筆者は席を予約するときに彼女の携帯電話にかけることもある。彼女は少し抜けたところもある人で、ある夜に寝ているときに電話がかかって来て「さっき電話くれた?」と聞かれた。席が空いているかと電話で問い合わせようとしたのは3日も前のことだ。日付を確認せずに深夜にコールバックするなんて……。相手が男性だったら「こんな夜中に迷惑です!」と怒りの対応をしていたことだろう。しかし、筆者は彼女がちょっと好きなのだ(浮気はしていないので念のため)。いつもとは違う優しい声で、「それは3日前だよ。うん、まあ寝てたよ。でも大丈夫。仕事がんばってね!」なんて言ってしまったのである。

「そうでしょう。大切なのは相手を見て気づかうことなんです。女性が話を聞いてほしそうだったら、ウンウンとうなずきながら聞いてあげてください。彼女はハッピーになるでしょう。そうしたら、恋愛のタイミングは自然とできるはずです」

 

恋は一瞬ではない。だけど永遠でもない

 

サヤカさんの意見を強引に我がタイミング論に引き付けて解釈すれば次のようになるだろう。女性がある男性に対して「口説いてくれたらOKしちゃうな」と感じる時間は一瞬の場合もあるが、たいていはもっと長い期間である。彼女に対して話しやすくて頼もしい男性であるように努力していれば、この「長いタイミング」がやがて訪れるかもしれない。

恋愛タイミングが訪れなくても良き男友だちの一人にはなれるだろう。ささやかな恋心を温めながら女友だちとの縁を楽しむことは人生を豊かにする気がする。焦る必要はないのだ。

ただし、何事にも永遠はない。彼女からの好意を察知し、自分も彼女がほしいと感じたら、素直に行動するべきだと思う。あれこれ考えすぎてグズグズしているうちに、彼女はあなたをあきらめて、次の恋を探すかもしれない。

恋は一瞬ではないし、永遠でもない。周囲の女性にとって好ましい男性であるように努めつつ、機が熟したら果敢に動かなければ幸せはつかめない。

※登場人物はすべて仮名です。

 

 

イラスト:吉濱あさこ http://asako-gaho.com/