第七回 絵の具や石を食べる、それがフードチャレンジャーだ

 

■絵の具の味にこだわるお年頃

 

 

男子高生の間では「メチャクチャな量を食べられる」フードファイターが尊敬されるが、「食べられない物を食べられる」フードチャレンジャーも尊敬されてしまいがちだ。

 

大バカから秀才、貧乏人から金持ちまで、学力や家庭の経済力に関係なく、バラエティに富んだ子どもたちが一緒くたにまとめられていた中学時代までとは違い、高校入試というセレクションを経た結果、学力も経済状況も似たり寄ったりな生徒が集まっている高校。

 

そんな中で、自分の個性を主張するために「○○が食べられる!」なんて言い出してしまうバカがいるのだ。

 

具体的にいうと、消しゴムや絵の具、紙、シャーペンの芯、チョークなどなど……。

 

この飽食の時代に、食べる必要がまったくないものをあえて食することで、自らのアイデンティティを見いだそうとするチャレンジャーたちだ。

 

「絵の具の白はマジで美味い!」

 

勉強でも運動でもパッとしない美術部のUが言い出した。

 

絵の具は、頭にウィークポイントを抱えているタイプの小学生もなめちゃいがちなので、「絵の具をなめる」というチャレンジ自体は珍しいものではなかったが、Uが情熱を燃やしていたのは「絵の具の味を知る」ということ。

 

ただいたずらになめるだけではなく、各色の味を分析しようとしていたのだ。世界初・絵の具ソムリエの誕生だ。

 

部活動の時間、絵も描かずに絵の具をペロペロなめては、味の感想をノートに書き留める日々を送っていたU。その結果、導き出された結論が、

 

「絵の具の白はマジで美味い!」

 

だったのだ。

 

「白は練乳に近い成分が使われているからメッチャ甘い。黒は炭が入っているから苦い!」

 

などと、興奮気味に研究成果を発表したUだったが、これほど興味の惹かれない情報もなかなかない。

 

しまいには、購買で買ったコッペパンに白の絵の具を塗って食べるという奇行に走っていたが、本格的に誰からも相手にされていなかった。

 

「マジで、練乳みたいで美味いから! ちょっと食べてみなよ!」

 

しきりにアピールしていたUだったが、「練乳みたい」なものを食べたいんだったら、コストパフォーマンス的にも普通に練乳を買った方がいいと思うな。

 

※絵の具の成分に関してはUが言い張ってただけなのでホントかどうかは知りません。色によっては、うまい・マズイ以前の問題として、身体に悪い成分も入っている可能性があるのでマネしないでね!

 

■「石を食える」という誰得なチャレンジ

 

さらに頭がおかしかったのが、「石を食える」と言い出したI……というかイシハラくん。名字に「イシ」が入っているからって、何も石を食料にしなくても……。

 

彼曰く「オレの胃酸は強すぎるから、時々石を食べるくらいがちょうどいい」とのこと。

 

石を溶かしちゃうほど強力な胃酸が出ているんだとしたら、胃壁なんて一発でボロボロだと思うけど。

 

そんなこんなで、イシハラくんが石を食べるところを見せてくれるというので、昼休みに集められたボクら。石を食べちゃうなんて、スゴイといえばスゴイけど、わざわざ見たいかといわれればそうでもない。興味2%くらいの観客たちだ。

 

イシハラくんが封筒から取り出したのは、河原で拾ってきたという、1cm大くらいの玉砂利の数々。

 

それを指でつまんで口元に持っていくと「ゾッ」という音とともに一瞬で体内に吸い込まれていく。つまんでは食べ、つまんでは食べ……玉砂利が次々と口の中に収納。

 

最初は「石食い」にまったく興味を持っていなかったボクたちも、ヒョイパクヒョイパクとやたらリズミカルに石を食い続けるイシハラくんの姿に魅了され、片手いっぱいあった玉砂利をすべて食べきる頃には大興奮。

 

最後、口をパカッと開けて「ちゃんと飲み込んでますよ〜」の確認をさせられると、一同スタンディングオベーション状態だった。

 

「石食い」で一躍クラスのスターダムにのし上がったイシハラくんに異変が起こったのは部活動の時間。

 

バレーボール部に所属していたイシハラくんは、いつものように練習に励んでいたそうだが、その日、彼のお腹の中には胆石や尿管結石とは別の、本当の意味での石が。

 

そんなものが収納された状態で飛んだり跳ねたりしていれば、そりゃあ身体に異変も起こるってもんで、突然、猛烈な腹痛を訴えてぶっ倒れたという。

 

すぐに保健室へ担ぎ込まれたものの原因は不明。……いや、本人的には原因は明らかだけど、バカバカしすぎて言い出せなかったんだろうなぁ〜。

 

結局「便秘かなぁ〜?」とか何とか言ってトイレに籠もり、石が排出されるのを待つことにしたイシハラくん。

 

2時間ほどの悶絶の末、ビスッ! ビスッ! という元気な音とともに肛門から石が飛び出して来た時には、まさにウミガメの産卵状態でリアルに涙が出てきたそうだ。

 

お腹に力を入れるたびに、ビスッ!(肛門から飛び出す音)カチーン(便器に石がぶつかる音)ビスッ! カチーンと、これまたリズミカルに石を発射できるようになり、

 

「あ、これも自慢できるかも」

 

と一瞬思ったようだが、さすがにその前に訪れる激烈腹痛を考えると、もう二度と石を食べる気にはならなかったという。

 

※さらに、石をすべて発射し終えた後、便器にたまった玉砂利を流すのにメチャクチャ苦労したそうなので、みんなも絶対にマネしないようにしようね。

 

 

 

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