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第九回 たまには「女の子」として見られたい。ちやほやされたい

 

 

結婚は「支え合い」だけど恋愛は「勝ち負け」

 

結婚は「支え合い」だが恋愛は「勝ち負け」だと思う。2人がまったく同じ熱量で求め合うことはありえない。仲良さそうに寄り添っていても、必ずどちらかが少しだけせつない思いをしているものだ。

同い年の男女を観察したとき、勝てる(モテる)タイミングと負けるタイミングが存在すると感じる。長期的なそれをざっくりと言うならば、物心がつく頃から25歳ぐらいまでが男性が女性に負け続け、それ以降は男性が優位になる。

若い頃は、ファッションセンスを含めた容姿、運動神経、トークのいずれかに秀でた男性に女性からの人気が集中しやすい。ちょっと不良っぽいスポーツ万能のイケメンが女性を独占するのだ。人間も若いうちは動物の世界と近いのだろう。その他大勢の男性はほとんどモテない。

学生時代が終わって社会に出たあたりから状況は少し複雑になる。「強いオス」が求められることは変わらないが、その強さの要素が筋肉や容姿だけではなくなるのだ。会社や家族を含めた世間をうまく渡り歩けることがより重視され、仕事がそこそこできて感じのいい男性が人生のパートナー候補として急浮上する。

男性はそれぞれの仕事分野で腰を据えて働いているだけでいい。社会人としての能力と自信が自然と身につくからだ。適切な場に出れば、同い年を含む幅広い世代の女性から需要があるだろう。

女性にはこのような現象は見られない。能力やステータスの高さが敬遠される一因になったりする。「現役世代」でいるうちは同い年との恋愛において劣位に立ち続けることになる。多くの社会人女性が年上の男性を恋愛対象にするのは、この力関係が作用していると筆者は思う。

現在42歳の筆者にとっては未体験のタイミングだが、たいていの人が現役を退く65歳ぐらいからは同世代男女の力関係がまた変わる予感がする。パワーの源泉が「仕事力」ではなくなるからだ。家事は自分でやって清潔に健康的に過ごせること、誰とでも仲良くなって社会性を維持すること、などが重要になる。こうした能力では女性のほうが優れているため、様々な人から求められ愛されやすい。

この状況はおそらく死ぬまで続く。我々男性としては、身の回りのことぐらいは自分でできるようにしておき、朗らかさを保たなければならない。プライドばかりが高い「面倒くさいおじいさん」にならないように気をつけたい。

 

会社では女として生きていない。可愛さは求められないから

 

つい前置きが長くなってしまった。今回登場してくれるのは教育関係の会社で働くマミさん(29歳)。東京駅構内のカフェで待ち合わせると、約束の時間通りにやって来てくれた。ロングヘアを人気モデルの中村アン風に無造作にまとめて下げていて、濃いグレーのタートルネックセーター姿。美人だからこそできるシンプルなファッションだろう。聞けば、仕事中はもっと地味な服装をしているらしい。

「会社では女の子としては生きていません。キレイさや可愛さを求められない場所だし、私もそれを出そうとは思いません。化粧もほとんどしていないことがあります。学生の頃は好きな服を着ていたのに……。だから、20代前半の頃は『たまには女の子として見られたい。男の子からちやほやされたい』という気持ちになることがありました」

普段は堅い職場で真面目に働いているからこその反動だろう。音楽やダンスも好きなマミさんはときどきオシャレをしてクラブに行く。すると、同じく遊びに来ていた男性客から声をかけられることも多かった。

「かわいいね、と言われたらやっぱり嬉しいです。でも、『誰にでも言っているくせに』とも思っていました」

学生気分を引きずりながらも、社会の厳しさも知りつつある女性の微妙な感情である。声はかけられたいけれど、軽すぎる雰囲気の男性は避けた。

「『夜に生きている』みたいな不健康でモラルがなさそうな人は苦手です。クラブにも清潔感があって信頼できそうな人はいました。でも、仕事の話ができない人とは長く一緒にいたいとは思えません。クラブでは楽しいだけでいいけれど、外では将来の話もできそうな人がいいです。『難しい話はできない』とか『カタギの仕事はわからない』なんて言われると困ります」

 

カッコいい人の生活にのっかりたい。頼りたい

 

当時は「カッコいい人の生活にのっかりたい」という気持ちが強かったとマミさんは明かす。話が楽しくて、自分よりもカッコいい服やレストランを知っていて、仕事もバリバリやって結果を出している男性に頼りたかったのだ。

「自分のキャリアとかは関係ありません。結婚して仕事を辞めて、旦那さんの転勤で引っ越す、なんてことも全然OKでした。カッコいい人の生活に入っていきたかったからです」

20代のうちに「寿退社」をして、夫中心の人生になることを希望する女性は現在でも少なくない。男性側からすると、若くて美しい女性を伴侶に迎える絶好のタイミングとも言えるだろう。

ただし、子育てを含む日常生活でも「カッコよさ」を維持できる男性は多くない。結婚当初の力関係がはっきりしているだけ、幻滅されるリスクが高くなる。65歳どころか35歳ぐらいで立場が逆転し、離婚を告げられるケースもある。

ちなみに筆者も32歳のときに28歳の女性と結婚し、甲斐性のなさがすぐに露見して、1年後には破局した経験がある。同じ過ちは二度と繰り返したくない。

 

※登場人物はすべて仮名です。

 

 

 

イラスト:吉濱あさこ http://asako-gaho.com/

 

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