第五回 「ナマコとワカメにだまされない」

 

世間は詐欺に事欠かなく、自身の過去を見返しても騙され事案はやめてほしいくらいある。

上京したての頃、学園祭で早稲田生と名乗る男に映像を作ってるサークルだからと声をかけられ素直にノコノコ付いていったら「これからいい集会が」と言われたあの日。今にして思えば同級生と一緒だったのに一人ずつ別々の日取りを指定されてる時点で警戒警報レーダーブン回りなのにインターネットはまだ遥か未来、知識も体験も情報共有ツールもない、村から出たての18歳女子にそんな分別強要できる???

20歳になっての就活はちょうど就職氷河期の始まりといわれた時期で、世間のノリは前世代バブルのまま、実態はマンモスとセメントマッチ、みたいな氷河クレバスにやはりなんの知識も社会フォローもなく放り込まれ、当時は男女雇用機会のアレがまだ随分アレでいわゆる「自宅生」は採用するけどそれ以外は女子として不潔、みたいな嫁候補的な意味での就職口に限られ、地方出身者である自分は削れに削れ、何十社と受けても決まらずフラフラと歩いていたのは新宿駅。

そこで見知らぬおっさんに

 

「女子アナになりませんか?」

 

ハ?ですよハ???

そう、冷静ならば。

当時とても弱ってた。お金もなくひもじく全く就職決まってない手負いの20歳そこそこのリクスー女なんてマッパですよマッパ、丸裸も同然ボディが新宿駅構内歩いてるみたいなもんですよ。

でも残り少ない理性が囁いた「いや…学歴ねえしそもそもビジュアル…」

そこにおっさんは畳み掛ける。

 

「いま、おもしろ枠で探してて」

 

アーあるかも面白枠ならあるのかも。

もう判断力ないから、これからあるという面接について行きそうになった。いやついて行くつもりだった。

だけどなぜかこのおっさんは途中で「あ、いいや」と立ち去った。

自分は面白枠にもゲートインできないのかとせつなく涙こぼした。

 

そして数週間後女子アナ声かけ就職詐欺犯人が逮捕とのニュースを聞いた。騙されずにすんだとホッとすると共にカモにすらなれねえのかと又せつなく涙こぼした。

 

つまり弱ると、悪い風が吹くと、人はどうしても弱さを、騙されやすさを露呈してしまう。

 

(世間もなにもしらないかわいらしいうりぼうだったあの頃…)

 

「えとナマコとねワカメの投資なんですけど」

 

電話人生相談にて、結婚相談所で知り合った女性にナマコとワカメの投資話を持ちかけられ数百万突っ込んだが何の音沙汰もないという男性。

 

「証書信用してて一生効力あると思ってたんでずっと様子みてたんですよ」

 

何らアクションは起こさず、何年もずっとナマコとワカメの様子をみてきた出資マン。

 

「会社は現存してますか?」

「してます、行ってみると看板無いです、小屋みたいなのだけ。それと自宅がその会

会社になってるんですけど表札はないです」

「現存…ちょっと待ってそれ違う、貸してと言った人は居るのね?」

「居ると思います」

「会った事は?」

「もうずっと何年も会った事はないです」

「そうするとその住所に住んでるかもわからない訳?」

「住んでるは住んでると思います」

 

証拠はないけど謎の自信はある。

ていうかそれを信じなかったらこの出身マンは、何かを認めてしまうことになるから…。

 

「住所あるって言ってるけど会った事ないおっしゃるし自宅行ってみられたようだけど表札も無いお話だしその人が実際どうしてるのかも状態わからない訳でしょ、あと幾ら証書あり判決ありにしてもね金の無い、資産ない人からは取れないんですよ」

「だけどあの、社長は結婚して、生活してるので少しぐらいは」

 

結婚という謎根拠を持ち出し、ナマコとワカメにすがる出資マン。

 

「証書あれば安心、て世界じゃないんですよ。強制執行できる事と取り立てが実際できるかは別で、判決出ても取り立てまでやってくれないんですよ。債権者、貴方の側で相手の資産きちんと捕捉して押さえてとお膳立てしないと裁判所持っていきようがないです」

「そうですか…」

とうとう肩落とす6年間ずっとナマコとワカメの様子をみてきた出資マン…。

 

いつだって思うのは人はどんなキッカケで弱ってたり欲をかいてナマコとワカメに出資してしまうかわからない事だ。それでもなんとか騙されないようにするためにはとりあえず、今までの自分の経験値と電話人生相談で得たデータで詐欺情報を、随時更新してゆくしかない。

とりあえず現時点におきまして私は「いい集会」「女子アナ」「ナマコ」「ワカメ」という単語を聞いたら即ケツまくってダッシュで逃げる所存です。

 

 

 

ナポレオンのメルマガに登録しよう!