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story11.当たり前がぶっ壊れる快感、VR体験

 

先日読んだ本に「わたしたちが今現実だと信じている世界は全て幻想だ」という様な事が書かれていて、ふと「そういう事もあるかもなー」と思った。本には、『現実』には何もないのに脳があるように見ているだけ。という事も書かれていて、それを想像すると「それってまるでVRじゃないか」と思った。

 

「もし、あると思っていた世界が本当はなかったとしたら?」

 

そんな事を考えるとなぜかちょっと嬉しくなった気がした。怖い夢を見ていて目が覚めた時のようなほっとしたような感じに似ているかもしれなかった。本の作者が言っているのがこの感覚と同じなのかというのはわからないけど、VRは夢の中で「これは夢だ」と言いながら行動するのと同じだなーと思って、そしたらちょっと試したいなぁ、と思ったのだった。

 

無いとわかっている空間に率先して突入するってどんな気持ちなんだろう。もしその感覚を上手に使えたら、何となく毎日はもっと楽になるような気が、漠然とだけどした。

 

 

イラスト:著者

 

携帯で「VR 体験 東京 無料」と入力すると情報はいくらでも出て来たのだけど、どこも予約でいっぱいで(調べるまでVR体験に予約が必要だなんて知らず、有料も要予約がほとんどでした)結局、その日空いていた池袋へ行くことに決めた。でも逆に沢山空いていると今度はどこを選べばいいのかわからなくなるので、ここしか無いと言われた方が決めやすくて逆に良かったと思う。

 

店に着いて、予約メールを見せるなどの簡単なやりとりですぐに体験準備を始めてくれた。この時点でわたしはVRを通じて、

 

「もしも自分が今『現実』としてあると信じている世界が実は脳が見せている幻想だったとしたら」

 

を、疑似体感しようとしていた訳だけれど、そんなキモイ理由で体験に来ているだなんて当然知るはずもない店員さんは「自宅で遊ぶと時間忘れちゃいますよ~」などと言いながら愛想よく平日の真っ昼間に一人で来た、よく考えたらまぁまぁ怪しい女に嫌な顔一つせず懇切丁寧に接客をしてくれた。彼に余計な心配を掛けないよう、できるだけゲーマーに見えるように装った。

 

 

色々と体験できるバーチャル空間を選ぶ事ができたけれど、現実=実は空想だったら、という体験がしたいだけのわたしは店員さんが勧めてくれたゲーム的要素の多いコンテンツを全て断った。一個だけ「江戸時代の定食屋で一人で注文をさばき続ける」というめちゃくちゃ興味深いコンテンツがあったのだけど今回の目的と違い過ぎたので泣く泣く諦めた。

 

 

尼さんの水中眼鏡とヘッドフォンが合体したみたいなマスクを装着すると目の前が真っ暗になった。「今ぶん殴られたら確実に死ねるな」とか「今のわたしのカバンの無防備さ天下一品こってり、一人行動の宿命(涙)」とか考えている時点でわたしはまだ全然『現実』にいるんだな、と思った。

 

ふと目の前に広いホールの様な景色が広がって頭の中で色々な音がした。まるで本当にそこに居る様だった。と、いうか居るのは間違いないか。だってVRの世界にはその装置で入ったんだものね。ただ体が移動していないだけ、と言ってもいいのかもしれない。

 

わたし全体を包むVR風景の中でその空間の物に触れたり動いたりしながらふと現実世界の自分の姿を想像した。マスクを被って両手にコントローラーを握ってぎこちないへっぴり腰で緑色の部屋に立っている自分の姿が見えて、「ああ、これがまさに何もない空間で何かを見ている状況」なんだなと感じる事ができた。

 

(↑没入空間で猫を撫でる女)

 

マスクを外した時、緑の壁が想像よりも更に目の前近くにあって、夢から覚めた時の「何だ、夢か」に似た感覚の何倍も大きな現実に引き戻された感があった。その後「また遠くに行きたいときはこれ(マスク)をつければいいや」とドラえもんのどこでもドアみたいにそれを使っている未来の自分が頭を過った気がした。

 

いつか誰かが「人生はあってないようなもの」と言っていたのを思い出してVRはわたしにとってはまさにその考えを体感できた時間だったなと思った。VRは「そこには本当は何もないですよ」と知りながらその世界を生きるという何というかある意味「余裕を持った生き方」の疑似体験だったようにも感じられた。(もちろん、プレイコンテンツによって目的は全然違うと思いますけども、今回のわたくしの変態的没入目的としてはそうであったという事で)

 

 

まだもうちょっと先かもしれないけど、でもいずれ何が現実で何がバーチャルかわからない時代がどうせ来るだろうし、スピルバーグもそういやそういう映画作っていたし。それまではとりあえず気持ちの上だけでも、

 

「今、目の前にあるものは幻」

 

という感覚を都合よく使いながら生きていけたら毎日の生活は幾分気楽に考えられるのかもしれないなーと思った。そして、「またVR体験に行こう」と決めたのだけれど、

その理由は、店員さんが菅田将暉に似ていたからです。

 

 

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