第十一回 毎日の小さな出来事をシェアできる恋人が欲しい

 

 

仕事に追われ、父親の病気も発覚。誰かに話を聞いてほしい

 

「仕事は好きだけど大変です。もう新人ではないので、業務量がどんどん増えています。『あれもこれも私がやるのか』と思うと途方にくれますよ。大好きな仕事だけに、上司にわかってもらえずに予算をもらえなかったりするとすごく悔しいです。でも、そんなときに誰に話したらいいのかわかりません」

教育関係の会社で勤務しているマミさん(29歳)にインタビューをしている。歌やダンスが好きで、趣味で舞台に立つこともある美女だ。

マミさんは体当たりで人生を切り拓くタイプの女性。それだけに風当たりも強く、喜びも悲しみも人一倍あるのだろう。誰かに話すことで心を軽くしたいと思うのは自然なことだ。

「でも、職場についてのネガティブな話なんて、友だちに話してもつまらなくさせちゃいますよね。知らない人がいっぱい登場してもわけがわからないので……。ルームシェアをしている女友だちに話すことが多かったのですが、『私は甘え過ぎだな』と申し訳なく思っていました」

最近、父親の病気も発覚した。不安で仕方ない。でも、母親や弟と話しても煮詰まるばかりだ。

「毎日の小さな出来事をシェアできる人が欲しいな、彼氏が欲しいな、と久しぶりに本気で思いました」

ちょっと不謹慎かもしれないが、このように女性が弱っているときは男性にとっては恋愛のチャンスだ。弱音や愚痴は誰にでも言えるわけではない。人として信頼しているからこそ、弱みをさらすことができる。

女性の話に対しては下手なアドバイスはいらない。黙って聞いてあげるだけでいい。そして、「がんばったね」「大変だったね」「あなたは悪くない」といった共感のサインを出す。ビール1杯など、ちょっとした贈り物をする。それだけで彼女は味方を得た気持ちになり、より高まった信頼感がそのまま恋愛感情に変わることもある。

 

あなたとは社会人としてのフェーズが違います

 

筆者は本連載で「美女が恋愛や性愛を求めるタイミング」を考察している。少しずつわかってきたのは、多くの女性が「安心できる場所」を強く求めているということ。依存したいわけではない。弱みを見せても裏切られないような人間関係が欲しいのだ。親には心配をかけたくないし、友だちには限界がある。そうなるとやはり恋人や配偶者が必要だ。強気で働いているように見える女性ほど、何でもいつでも話せる信頼できるパートナーを渇望していたりする。

マミさんはやや見当違いの努力をした。外見だけでお互いを選ぶことで有名なマッチングアプリに登録したのだ。そして、2歳年下の営業マン、タカアキさんと出会う。

「お互いの家が近くて、旅行好きなところで意気投合したんです。ちゃんとしている子だったからしばらく付き合いました」

しかし、付き合い始めてすぐにタカアキさんとは「社会人としてのフェーズが違う」と感じてしまった。

「私が仕事でフラストレーションが溜まり、彼にいろいろ話したとします。職場をもっとこうしたいという気持ちが強いんです。

でも、彼には愚痴に聞こえてしまうらしくて、『まあまあ、そんなに怒らないで』と言われました。怒っているんじゃないのに……」

社会人も7年目になり、マミさんは会社や上司に一方的な不満を募らせる段階は克服していたのだ。腹が立つことはあるが、それを含めて少しずつ改善し、より良い仕事ができるようになりたい。建設的な気持ちを込めた話なのに、単なる愚痴だと片づけてほしくない。

 

尊敬や信頼が失われると会話は弾まなくなる

 

もっと手ごたえのある反応をしてほしい。でも、タカアキさんにそれを求めるのは無理そうだ。マミさんは「そうか、この子に話してもわからないのか」とあきらめた。尊敬や信頼が失われると会話は弾まなくなる。半年ほどで2人は疎遠になり、別れることになった。

マミさんは「社会人としてのフェーズ」と表現したが、これもタイミングの問題だと筆者は思う。例えばマミさんが38歳の管理職で、現在のように新人から脱皮する際の苦しみを抱えていなかったら、27歳で能天気なタカアキさんを愛することができたはずだ。また、お互いに就職3年目ぐらいだったら、仕事の愚痴を言い合いながら楽しく交際を続けられたかもしれない。

でも、実際のマミさんは29歳で、甘さが抜けないタカアキさんに同族嫌悪のような感情を抱いてしまったのだろう。付き合い始めるタイミングが悪かったのだ。

 

※登場人物はすべて仮名です。

 

 

イラスト:吉濱あさこ http://asako-gaho.com/