第3回 モテる人はどんな本を買うのか?

 

「モテ」というお題を前にしたとき、自分が本屋の仕事をしているのでしぜんと「モテと本」というテーマを思いつきました。でもそれが困難な道になるなんて、まったく想像できていませんでした。 

 

遠くて遠い、モテと本

 

連載を始める前、リサーチとして周りの20〜40代男女に「モテと本について」話をそれとなく聞いてきました。

みな学生時代にたくさんの本を読んでいたり、今でも趣味は読書だったり。基本的に本好きの、すてきな人たち。

 

・いいな、と思っている人と同じ本を読んでいて意気投合

・読書している姿が気になり声をかけてみた

・私が借りる本の図書カードに、いつも同じ人の名前が

・書店で同じ本を取ろうとして指先が触れ合ってハッ!と何かが芽生えた

 

みたいなエピソードをたくさんうかがえると思って期待していたのですが、出て来た話は…

 

・本をたくさん読めばモテると思っていた(でも現実は…)

・本好って知的に見えるけど、それをアピールする人はちょっと…

・あまりディープな読み方をしている人は、逆に引く

・学生時代本ばかり読んでるやつがモテてたのを見たことがない

・本を読む人がモテる社会になってほしい…(切実な声)

 

さまざまな意見を聞けておもしろかったものの、話せば話すほど、モテと読書は離れていくばかり…。

 

私が話を聞いた人が偏っていたのでしょうか? いや、私の浅はかな想像では決してたどり着けないような、「モテと本」の関係性もあるはず。それはきっと長く困難な道……。

 

そんなわけで、連載わずか3回目ですが、ここでいったん気持ちを切り替えましょう。

今回は15年の本屋経験から「モテそうな人が買って行ったもの」をご紹介したいと思います。

 

「絶対にモテる」アイツが買ったもの

 

春先のぽかぽかした陽気のある日曜日。3〜4才の男の子を連れた、30代半ばほどに見えるご夫婦がご来店しました。

他にお客さまもおらず、夫婦それぞれが棚を見たり、あちこち歩き回る坊やと手をつないで、店内をうろうろしながら商品を見ています。

 

夫は自分の読む本を選びながら、合間合間で坊やにせがまれ絵本を読み聞かせしています。

妻は本よりアクセサリーに興味があるようで(当店は雑貨やアーティストグッズも置いてあります)、とある作家さんの指輪を手にして「これ可愛い〜、でもどうしよう〜」などとつぶやいています。

私はレジから「いわゆる家族の休日だな〜」とのんきに眺めておりました。直後にあんなことが起こるとは夢にも思わず……。

 

妻が気に入った作家・ミクラフレシアさんの指輪。1980年代に訪れたアメリカやヨーロッパの蚤の市で買い集めたという、ヴィンテージのガラスでつくったカジュアル・リングシリーズです。 

作家website http://miquraffreshia.net/ 

 

そうこうしながら20分ほどすごした後、すっかり飽きてしまった坊は、さっきから「行こうよ〜〜行こうよ〜〜」を連呼しています。店のすぐ近くに子どもが好きそうな公園があるのです。そりゃあ本よりすべり台がいいよね。 

 

もっと見たいけど子どもが限界、そろそろ帰ろうか…という空気になり、夫が1冊の本と絵本を1冊レジに持って来ました。私は「あ、ここんちは夫が払うんだね」なんて思いながらレジを打ちました。 

坊やの体はもうほとんど斜め45度、全体重をかけて母親の手をひっぱっています。妻は名残惜しそうにしていましたが、夫はもう会計をしているので、そのまま坊やと店を出ました。 

 

よくある光景だね、と微笑ましく見ていた、そのときです! 

 

夫は、妻子が扉の外に出た瞬間、彼女が買おうかどうか迷っていた指輪をスッとレジまで持って来て「これください」と。 

 

…お! 

 

おまえっ!! 

 

絶対モテるだろ!!! 

 

心の声は大絶叫でしたが、私は普段どおりにレジを打ちました。 

 

「お買い上げありがとうございます」 

 

このエピソードは当店のスタッフにも綿々と語り継がれております。 

かつ、後にも先にもこれ以上のモテエピソードはありません。

 

指輪ショックで本のタイトルをすっかり忘れてしまいましたが、絶対モテるに決まっている夫が選んだのは、こんな感じの、ちょっとおもしろそうな軽めながらもしっかりした読み物でした。

著者サイン本がここで買えますよ!

https://stores.jp/search?q=%E3%83%91%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%B3&store=popotame

 

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