第一回 刹那的にでも誰かに抱きしめてもらいたい。それが「ビッチ期」

 

性欲ではなく、女性としての承認欲求が強いエリコさん

「ケンジくんとは付き合っているわけではありません。でも、若いのですごく嫉妬深いんです。ある日に大げんかしてムシャクシャしていたので、マサオさんに久しぶりにLINEしました。『明日の昼、空いてる?』って。『空いてるよ。ゴハンにでも行く?』とすぐに返事してくれたので、『ううん。ちょっと抱いてほしいだけ』とお願いしたら、『わかった。13時~17時までなら大丈夫』と軽く言ってくれました。翌朝にケンジくんと仲直りしなかったら、マサオさんと楽しくセックスしていたと思います。キャンセルをしてもマサオさんは怒ったりしません」

外資系企業に勤務しているエリコさん。30歳。離婚歴があり、1年ほど前には2年間付き合った恋人と別れている。「性欲は強くないけれど、女性として求められたいという承認欲求が強い」と自ら分析する美女だ。寂しがりでもある。

大学院生のケンジくん(24歳)とは今年の初めに出会い系アプリで知り合った。高身長で筋肉質、顔もカッコ良くて、大学の理系学部を首席で卒業するほどの頭脳の持ち主だ。会話が楽しく、波長も合った。今年の秋に海外留学をするまでの住居に困っているというので、「うちに来る?」とエリコさんは誘った。

「付き合ったりすると別れるときに気まずくなるので、あくまで友だちとして一緒にいることにしました。そうすれば、彼が帰国したときにまた仲良く過ごせるでしょう」

 

同棲中のイケメンと大げんか。「男のうっぷんは男で晴らしたい」

プラトニックな関係ではなかった。半年間で2人は濃密な時間を過ごしたのだ。毎朝、「好きだ」「世界で一番可愛い」と言われながら若いイケメンに抱きしめられることで、エリコさんの承認欲求は大いに満たされていた。

しかし、若いケンジくんは割り切った関係に満足できなくなることがあり、わざとエリコさんにケンカを吹っかけることがあった。年下には甘いエリコさんもひどいことを言われたら傷つく。そして、「男のうっぷんは男で晴らしたい」という気持ちが高まる。

「そういうときに声をかけるのは、イケメンではありません。生理的に無理でなければ、外見はどうでもいいんです。中身を重視します。自分がボロボロのときにキツイことを言われてさらに落ち込みたくはありませんから。余計な質問をせずに、すべて受け止めてくれるような優しい人を選びます」

飲食店経営のマサオさんとも同じ出会い系アプリで2年前に知り合った。エリコさんよりも10歳年上。カッコいいけれど、「若いイケメン」好きのエリコさんのタイプではない。しかし、セックスと恋愛を切り離して考えているところなどがエリコさんに似ていて、常にさっぱりと朗らかに対応してくれる。

「女の子の扱いに慣れている人です。言ってほしいことをすべて言ってくれるし、セックスではどMな私の要求に応えてくれます。肉体的なSMではなく、精神的なものです。メンタル的にすごく落とされるセックスなのですごく疲れますが、同時に100%癒されるんです。メンタルが荒れているときは、めちゃくちゃ優しくされたいだけじゃなくて、自傷行為みたいなセックスを求めちゃうのでしょう。自分だけじゃなく相手もモノのように扱ってやりたい、という気持ちになります」

 

「素の自分を見せても温かく受け止めてくれそうな男性」とは

やや危険を伴う行為だけに、エリコさんはその相手を慎重に選定している。マサオさんの他には、近所に住んでいる1歳上のテレビディレクターという候補がいる程度だ。

「普段から聞き上手だったり、連絡したら即レスしてくれたり、フットワーク軽く駈けつけてくれたり、いつもニコニコしていて一緒にいると元気になれたり。弱っているときに刹那的にでも抱きしめてもらいたいのはそういう人です。素の自分や荒れている姿を見せても温かく受け止めてくれそうな男性はモテると思います。でも、実際にはあまりいませんね」

刹那的にでも誰かに抱きしめてもらいたいタイミング。それを「ビッチ期」と呼ぶことにしよう。ただし、誰でも迎えられるわけではない。エリコさんに対して、いつも優しく朗らかに接していて、連絡が来たら即レスをしている男性のみがその門を叩くチャンスを与えられるのだ。

 

※登場人物の名前はすべて仮名です。

 

イラスト:吉濱あさこ http://asako-gaho.com/