第十四回 金曜の夜から日曜の昼までは開放的な気持ちです

 

 

平日は「怖い上司」を演じている私。週末になると…

 

フリーライターである筆者は曜日感覚が薄い。仕事があるときは働くし、暇なときはダラダラしている。毎日が月曜日であり日曜日でもある感覚だ。独身時代は時間帯もあまり気にしていなかった。昼夜が逆転した生活を送っていた時期もある。目が覚めて外が薄暗いと、明け方なのか夕暮れなのか判断がつかないこともあった。

工場勤務の妻と共同生活をするようになってからは組織で働く人の気持ちが少しわかるようになった。ときには部下を叱らねばならない立場であるほど、夜はしっかりと休んで朝からシャキッと職場に行かねばならない。情緒や体調の管理も含めて仕事なのだ。

金融機関のマネージャー職として働いているタカコさん(43歳)は職場では「怖い上司」だと自覚している。専門分野に関しては「オタク」を自任するほどのめりこんでいるため、いい加減な心構えで臨んでいる部下は年上男性であっても容赦はしない。怒鳴りつけるわけではなく、冷静に合理的に問い詰めるのだ。

「私は中間管理職に過ぎません。当然、上からのプレッシャーもあります。がんばらなくちゃいけないんです」

と言い訳をしつつ、「我ながら変態だなと思うほど仕事が好き」だとタカコさんは明かす。そして、結果もきっちりと出す。天職なのだ。

「新しい知識を仕入れるのは面白いし、いくらでも突き詰めたくなります。好きな仕事に巡り合えて幸せです。でも、同じことを部下に求めてはいけないと先輩から注意されたことがあります。配属でたまたま私の下に来た人に、私と同じだけの情熱を仕事に向けてもらうのは無理なんですね……」

 

ビールやワインを一緒に飲みながらホッとできる相手が欲しい

 

平日はきちんとした服装と姿勢で仕事にのめり込んでいるからこそ、緊張から解き放たれる時間も必要になる。具体的には「金曜の夜から日曜の昼まで」だ。

「家に帰って来て洋服を脱いでリラックスしているような開放的な気持ちです。仕事を忘れて盛り上がることができます」

3年前に離婚をして、現在は恋人もいないタカコさん。週末というタイミングは気心の知れたパートナーが欲しくなると明かす。

「お互いに今週は疲れたよね、なんて言いながら反省会をしたいんです。ビールやワインを飲みながらホッとしたい」

会社では「コンビニ食で暮らしている」と部下から思われている。しかし、実際にはそのような無味乾燥な人間ではない。料理関係の資格を持っているほど食に関心があり、ビールやワインと合わせながら楽しみたいのだ。

このインタビューを行っている場所も、東京・八丁堀にある良きレストランをタカコさんが予約してくれた。ワインが売りのお店なのにワインリストはない。食べたい料理に合わせてソムリエが何本もワインをテーブルに持って来て、風味と値段を教えてくれる仕組みだ。筆者も飲食好きなので、タカコさんと相談しながらワインを選んだ。出された料理とぴったり合ったりすると確かに楽しい。つい飲み過ぎる。

「私は海外旅行も好きなので、旅と食事を一緒に味わえる人がいいなと思います。前の夫はほとんどお酒を飲めませんでした。やっぱり飲める人はいいですね」

筆者も離婚経験者で、前の妻はアルコールを受けつけない体質だった。食事を楽しむ習慣もなかったように思う。だから、タカコさんの言いたいことは痛いほどわかる。

インタビューの仕事をしていると、ごくたまに「これがプライベートで、しかもオレが独身だったら、いまがまさに彼女の肩を抱き寄せる時なのでは?」と感じることがある。気持ち良く話してもらえそうな場所を選び、真剣に(仕事だから当たり前だが)相手の話に耳を傾けているから、そのタイミングがわかるのかもしれない。

今回では、2本目のワインを注文したあたりがそれだった。ただし、プライベートではこのタイミングがなかなか訪れないのが不思議である。

 

※登場人物はすべて仮名です。

 

 

イラスト:吉濱あさこ http://asako-gaho.com/