第十六回 既婚の先輩との不思議な関係。キスは大人の清涼剤です

 

 

 

 

節度を守れば職場にも恋があっていい、と思う

 

職場にも恋があっていいと思う。「セクハラ」という殺伐とした言葉が一般化して久しいが、そのせいで職場恋愛がやりにくくなっていることは否めない。未婚化・晩婚化の遠因にもなっているだろう。

問題は恋することではなく、想像力と思いやりの欠如なのだ。相手の立場と気持ちを大事にして、自分の欲望を押し付けないように気をつけなければならない。そのうえで特別な感情を持ち、素直にそれを示すことは認められていい。たとえ成就しなくても、お互いにとって優しく温かな思い出になるはずだ。

両方もしくはどちらかが既婚者の場合は慎重さが必要だ。下手をすれば法的に責任を問われるだけではなく、家族を傷つけることになってしまう。職場にも居づらくなるだろう。もし恋愛するならば、①「近いうちに離婚してあなたと再婚するつもり」などという嘘はつかない、②度を越したことをして家庭を壊したりしない、の2点を厳守することが求められる。

 

爽やかで穏やかな彼からの好意ならば「いつでも」受け入れる

 

都内の金融機関でマネージャー職を務めるタカコさん(43歳)は、3年ほど前から上司で既婚者のフミアキさん(50歳)と親しい関係にある。当時、タカコさんは苦しい協議の末に離婚したばかり。以来、好意を寄せてくれるフミアキさんを嬉しく思い続けている。

「きっかけはちょっとしたことでした。彼は私とは別の部署で働いていますが、ときどき仕事で関わることがあります。『会社に書類を忘れたので持って来て』と頼まれて、そのついでに『飲みに行きませんか?』と誘われました。それからずっと仲良しです」

本連載のテーマである「美女が恋愛しやすいタイミングを見分ける」について言うならば、タカコさんは離婚して独身に戻った時期であった。ただし、次の相手は誰でもいいわけではない。タカコさんの前夫は優秀だけれどこだわりが強くて思いやりには欠けていた。同じようなタイプの男性は避けるのが当然だろう。

フミアキさんは仕事熱心な一方で爽やかで穏やかな人物だという。仕事への異常な情熱を部下にも要求しがちなタカコさんを優しく諌めることもあった。タカコさんからしても、フミアキさんからのアプローチは「いつでもOK」だったのだろう。きっかけやタイミングはそれほど重要ではない。

 

一番近くで私を見ていてくれる彼。いなくなるのは困ります

 

最初の1年間ほどは肉体関係もあったと恥ずかしそうに打ち明けるタカコさん。その後は、仕事のことは誰よりもわかり合えて、飲みに行ったらキスぐらいはする「不思議な関係の同志」になったという。

「チューはいいでしょう。清涼剤ですから(笑)。平日は毎日『おはよう』メールを送り合っていて、午後4時になると決まって一緒にコーヒーを飲みに行きます。お酒を飲みに行くのは月に1回ぐらいです」

タカコさんはフミアキさん以外にも恋人がいた時期がある。それでも交流は続き、その恋人と別れるときは相談に乗ってもらった。

「私のような年齢と立場になると、仕事上で信頼できる人はどんどん減っていきます。彼は何でも打ち明けられる貴重な一人です。職場では、一番近くで私のことを見ていてくれるのかなと思っています。いなくなってしまうと困りますね。でも、奥さんやお子さんから彼を奪ったりするつもりはまったくありません」

プライベートでは4歳年上の姉と親しい。姉は既婚で子どもはいない。夫婦仲が良さそうな様子を見ると、「また結婚してもいいな」とタカコさんは思う。

再婚したとしても、タカコさんはフミアキさんや姉と疎遠になったりはしないと思う。本当に大切な人は多くないけれど、恋人や配偶者1人だけではない。仕事を含めて、大人の生活には様々な側面があり、特定の人としか分かち合えない知識や感情があるのだ。だから、好きな相手は複数いるのが自然だと思う。大人の恋は分散投資でいい。タカコさんの話を振り返って、そんなことを考えている。

 

※登場人物はすべて仮名です。

 

イラスト:吉濱あさこ http://asako-gaho.com/