第9回 プレゼント上手はモテ上手?忘れられない本の贈り物

 

 

 

本をプレゼントしたことはありますか? 本に限らずプレゼントって難しい……。相手をあまり知らなくても、知りすぎていても、喜んでくれるかどうか不安なものです。食べたらなくなるお菓子や暮らしに役立つ実用品と違って、本を贈るというのはかなりハードルが高い行為。相手がその本を読まなきゃいけませんから。今回は若き読書家のYさんに、すてきな本のプレゼントの思い出を伺いました。

 

 

Yさんは24才だよね。いつもバッグに1冊本を入れているけど、友達もけっこう本を読む子が多い?

 

「うーん、学生の頃は必要だから読んでる子もいたけど、働くようになると時間もないし。正直私もスマホ見てる時間のほうが長いです。ただ、本はまた別のものだから、いつも1冊は読んでます」

 

本の貸し借りなんか、しないよねえ…(してほしいけど)

 

「友達とはしませんね。いちばん本の貸し借りをするのは……弟かな。弟も小説やマンガが好きだから」

 

たとえば、どんな本?

 

「伊坂幸太郎の『火星に住むつもりかい?』(光文社)。弟が、これおもしろいよって借してくれました。それから伊坂幸太郎をときどき読むようになったなあ。私がすすめたのは、スラムダンクとか舞城王太郎とかですね」

 

きょうだいでなかなか渋い趣味ですね。同世代の友達で本の話をする人はいないのかな?

「あまりいないけど……、あ、小学校のときの同級生のSくんが大学生になってから文庫本をくれたことがあった」

 

え!エピソード聞かせてください!

 

「私は地方の美大に行って一人暮らししてたから、あまり会ってはいないんですよね。ご近所だから、互いの進路くらいは知っていたけど、ちゃんと話をしたのなんて小学校卒業のとき以来。ほんっとうに久々で、びっくりしたんだよね」

 

それ…何かが起こりそうな予感じゃないですか?

 

「いや、とくに何も起きてません。その本がこれです」

 

辻村深月『光待つ場所へ』(講談社文庫)
自分の感性に自信をもつ大学2年の主人公の心の揺らぎを描いた「しあわせのこみち」他、全五篇の短編集。

「ちょうど私たちも大学2年生くらいのとき。S君がたまたまこの本を読んだときに、美大に進んだ私のことを思い出したんだそうです。主人公が大学の課題で絵を描いて、その子はすごく自信があったのに別の学生が褒められて……っていうお話で。

この頃って、何かにならなくちゃいけない、特別になりたいっていう気持ちは強いのに、状況はついていかない時期なんですよね。S君は美大ではなくて普通の文系の大学生に進んだけど、同じように悩んでいたのかなと思います」

 

その本をもらったとき、嬉しかったですか?

 

「うん、なんかね、センスあるなーって思いました。自分で考えていることを、本を贈ることで伝えるっていうのかな。そういうことができるって、かっこいいなって。たとえば親とかおばあちゃんとかが、これ読みなさいってプレゼントするのとは違う……だから私もお礼の手紙はちゃんと書きました」

 

なるほど。同じプレゼントでも、ちょっと違う。相手に対してこうなって欲しいとか、これを贈ることで変化を求めるとかではない……わりと一方的な本のプレゼントですね。

 

「そうそう。お互いが一方通行なのかもしれないけど、それでいいっていうか。この本の思い出は、たぶん私もS君も違う視点で持っているんですよね。でも何かきっかけがあれば、あのときの、自分のことでいっぱい悩んでた時間を思い出すんじゃないかな」

 

うん、モテとはあまり関係ないけどいい話です。その後、S君とは?

 

「会えば挨拶しますよー」

 

って、もったいない気がするのですが……いいんですいいんです、そういうんじゃないんですよね。プレゼントといえば、つい何か反応や効果を期待していましたが、Yさんのお話をうかがって考え方が変わりました。モテとか関係ない!一方的に本を贈りましょう!

 

 

 

 

 

 

 

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