第十二回 「人は被害に立ちたがる」

 

 

日々、その時間に在宅している限りは(ほぼ毎日の意)ラジオにて電話相談を聞くことを日課としているのですが、番組のスタイルとして「相談者」には何かしらの「困りごと」があり、その障害を取り除き解決したいという要望を状況説明とともに開示しそして回答へ、が通常進行となります。

またその「困りごと」故に、負担を強いられていたり被害を被っているということで立場は被害者側を取る、となるのもまあ、基本姿勢になるのですが、しかし実際は本人の話を聞いていくうちに、被害と加害が逆転してしまう瞬間も多々生まれ…真実はけして一つではなく、星と人間と主観の数ほどあることを教えてくれる…このように電話相談は非常に示唆に飛んだ教材であり…人生のドリルでもあり…私はそれを毎日昼間っから…家からも出ず私は一体…。

相談者主観モード(被害ver.)で視聴していた筈なのにある瞬間から、もしくはじわじわとグラデーションで切り替ってしまった被害と加害、世界の変容、本来ならばゼヒにもラジオの本放送で体験してほしい…。

 

「被害と加害の構造は容易にでんぐりがえるクマーッ」

 

離婚して引き取った思春期の娘の反抗に困りかねている父親より。

 

「あの、中学生なりまして、マア思春期反抗期で見守ってはきたんですけど」

「話し合おうと面と向かったんですねそうしたら父親ヅラしないでよアンタはただの同居人だと、ソレ言われた時ほんとに泣いてしまいましたねハイ」

 

悲しみ溢れる声でせつせつと訴える父親。

 

「あの、そもそもの離婚理由は?」

「ア、過去の風俗ですね」

 

こんなに一瞬で世界の色が変わる風、みたことない。

 

いや「風俗」が悪、というのではなくそのあともむせび泣きながら「涙を飲んで」とか「私なりに一生懸命やってきたつもりで」「元妻に男の影を感じていた」などと情感タップタプに自身のつらい立場を訴え続けていくのだけれどどうしても「いうても風俗…」が毎回復唱されてしまいさっきまで感じていた世界にはもう戻れない…世界は不可逆…。

 

 

子を連れて突然出て行ってしまった妻と離婚し、親権をとりたいという男性。

 

「連れまわされてる子供がかわいそうでかわいそうで」

 

しかし聞いていくうちに実は相談者本人のDVによって現在シェルターと警察に保護されてる事案と判明し、一気に被害と加害の構図が逆転、相談者はまず自分の状況認識してくださいへのご理解フェーズに。

 

「確かにお子さんの不安定な状態はかわいそうですが、この状況つくってるのはあなたの方に責任があるんじゃないですか?」

 

と回答者に指摘されるもご理解には至らず、ただひたすらに妻の勝手の被害者として、かわいそうな子を取り戻したいと訴え続ける相談者。

 

「あのーもし、私が買い物やってて、向こうも買い物やってて、子供をみかけたとして、連れて帰ったらお縄になっちゃいますかね?」

 

ピッカーーーンひらめいた!みたいな口調で、完全に尾行および待ち伏せ併用前提の犯罪計画の是非を持ち出し、えっ自覚なく言えちゃう自然児???と思いきや「逮捕」をやわらか表現に言い換えていることにより事態を軽いノリですませようとする姿勢が見え隠れし、やはりかすかな自覚はあるのバレてる相談者の心身のバランスよ…。

 

「誘拐になっちゃうんですか!!!自分の子供なのに???」

 

発言の端々に漏れ出す子供や身内へのモノっぽい所有感…まるで疑わないし譲らない被害者側スタンス…。

最初は遠回しに、途中からはダイレクトに説明しても、最後まで妻子がシェルター保護されている状態の意味が伝わらずとうとう

 

「あなたが悪い人だと思われてるんです!」

 

と、回答者の弁護士に「加害側」「それ犯罪」を法的な用語のカケラも使えず限界まで平らにのばしてフニャフニャにした翻訳を出力させてしまうんですが、最早これは言葉の理解レベルじゃなくて自身に都合悪い事は耳に入らないタイプの手強さの話であり音声のVRこと電話相談、相談者側の立場にしがみついて離さない人間の業を平日昼間っからその絶望を疑似体験させていただきました…。

ところで今朝食卓で、子がふりかけを盛大にぶちまけて後始末や原因を巡り、若干の揉めのあと「ふりかけが必要なほど貧弱なおかずのせい」という着地点となり最終的には私がなじられる結果となったんですが、私、被害者ですよね??????(疑わない)