第12回 モテる人のモッテる本(前編)

 

 

 

今回お話をうかがったWさんはイラストレーター。書店や雑誌で彼の絵を目にすることもたびたびの、もはや売れっ子というよりしっかりしたプロフェッショナル。超多忙のはずなのに、友人知人の展示やイベントにもまめに顔をだし、当店にもしばしば足を運んで本を買ってくれる好青年(そこ)。

 

そんな活動ぶりとはうらはらに、ご本人はパワフルという感じでもなく、ひょうひょうとしたたたずまい。フレンドリーだけどなれなれしくなく、話題も豊富なので話も弾みます。本のこと、映画のこと、音楽のこと……知識ではなく自分の感想や経験をそのまま話し、いわゆる「評価」をしないところが同年代の男性にしては珍しいなあと思っていました。

 

と、のっけからハードル上げた感じですが、この連載をはじめるにあたって、Wさんは話を聞こうと決めていた一人です。なぜなら私が知っている男性の中ではもっともモテそうだから。

 

 

春のある日、取材の待ち合わせ場所に「これからハイキング?」と聞きたくなるようなリュックサック姿でWさん登場。‘モテと本’というざっくりすぎるテーマに対し、目測5キロの本を家から運んで来てくれたのです。申し訳ない…!

 

——たくさんの本……ありがとうございます。ところでWさんはモテますよね、って言われるほうですよね。

 

Wさん「……たまに言われます」

 

——どうしてだと思います?

 

Wさん「こういうふるまいをしているからそう思われるのかな?、と思うことはあります」

 

——どんなふるまいなんでしょ? 思わせぶりな感じはしないですよね。

 

Wさん「つかずはなれずというか、ほどよい距離感というか。自分自身が、グイグイこられると引いちゃうところがあって。昔の自分を見ているようで……辛いんですよ」

 

——昔はグイグイいってたんですか。

 

Wさん「いってましたねー。自分ではベストを尽くしているつもりでも、相手の望むベクトルとぜんぜん違う方向なんですね。思い込み、妄想を相手に投影して…失敗して学びました」

 

Wさんがリュックに詰めて持って来てくれたモテ本の一部。それぞれの解説は追々……)

 

Wさん「これが、ぼくの考えるモテる本です。人もそうですけど、モテって‘醸し出される何か’だと思うんですよね。本ならデザイン、綴じ方、紙……いろいろ総合したものから、その‘何か’が出ていて、ぱっと見たとき、持っておかなきゃいけない!と思うような」

 

——「もって」おかなきゃ=モッテ=モテ、ですか!でもそれって外見ってことですか?

 

Wさん「中身も比例することが多いんですよね。内容が良ければちゃんとした形で送り出したくなるので、しぜんと外見にそういう気持ちがあふれ出ていると思います」

 

——確かに。書店でもたくさんの本のなかでキラッと光ってて、思わず手にとることがありますよね。

 

Wさん「じつは積ん読(※積んでおくだけで読まない本)も多いんです。持っているだけでも嬉しくて、買うことでまず満たされるところがあるので。でもそこから時間がたって読んでみると、やっぱり中身もおもしろいんです」

 

——第一印象の‘モッテいたい’が中身にまでつながるということですね。

 

Wさん「モテる人って色気があるじゃないですか。たとえば自分は図版と文章のバランスが気になるのですが、そこにも本の色気がある気がします。このブルーノ・タウトの本などは自分にとってはそのバランスが絶妙なんです。じっさいは建てられていない『アルプス建築』などの、空想のイメージがたくさん載っているんですが、見たときに持っていたいと思ってすぐ買いました」

 

——アルプス建築とは?

 

Wさん「アルプスに途方も無い大きさ美しいガラス建築を建てれば、人々には目的ができて退屈しなくなり、やがて戦争もなくなるという。乱暴に言えば、そういうユートピア構想で。ブルーノ・タウトは〝ただ単に役に立ち、快適でありたいと思うこと、それは退屈だ〟と言っています。役に立たないけど、どうしても心惹かれてしまう美しいもの。ここにもモテのヒントがあるかもしれませんね」

 

(次回に続く!)