第二十回 28歳。「体の相性」よりお互いに想い合うことが大事だと気づきました

 

 

 

 

男女の相性とは「サオと穴のこと」だと思っていた若い頃

 

相性という言葉は便利だと思う。人間関係の良し悪しはたいてい相性で片づけてしまえるので、筆者もこの言葉を多用している。

しかし、すべての相性が自分とぴったりな他者など存在しない。例えば映画観賞が共通の趣味だったとしても、好きな作品は微妙に違ったりする。ならばいっそのこと趣味の相性などは合わないほうがいい。

筆者の場合、スポーツ観戦にはほとんど興味がないが、熱烈なプロ野球ファンである妻に付き合って野球場に行くことはある。選手のことなど何も知らないが、華麗な守備などを見て適当な感想を述べるだけで妻には新鮮で嬉しいらしい。玄人は素人が好きなのだ。

相性が合わないと困ることもある。筆者の女友だちは結婚する前に「笑いの相性、舌の相性、体の相性」の3つをチェックしたいと公言していた。ともに笑い、同じものを味わい、一緒に寝る。確かに夫婦生活の基本である。

酒とセックスが大好きだと自認する会社員のハルカさん(28歳)。華やかな都会にいても目立つ美人である。彼女にとっての相性はもっと具体的だった。男女の相性とは「サオと穴のこと」だと言い切っていたのだ。

「今は違います。セックスをするにしても人としての相性が大事だと気づきました」

 

会話がかみ合わない男性としても、集中できません

 

恋人がいてもいなくても「週2」でセックスをしないと欲求不満になってしまうハルカさん。男性に関してはかなりオープンで、出会う男性の約6割は受け入れられると思っていた。もっと若い頃は「手当たり次第」だったこともある。しかし、最近は少し冷静になっている。

「以前、会話がどうにもかみ合わない男性と『まあやってみようか』という話になってやってみたんです。すべてがかみ合わず、集中できないと感じました。流れるようなセックスをするためには、サオと穴のフィット感やテクニックよりも、お互いに想い合うことが大事なんですね」

ハルカさんはえげつない下ネタのようでいて美しい真実を語っていると筆者は思う。ストレスで病気になってしまうことからわかるように、人間の体は感情に大きな影響を受ける。信頼と尊敬を前提として愛おしさを覚える相手であれば、体の一部のフィット感などは自然とコントロールできるのだ。外形的なものだけを追求して「100人切り」を誇ったりする人はむしろ性的に未熟だと言えるかもしれない。

刹那的な快楽よりもお互いに想い合うことの気持ち良さを重視し始めたハルカさん。恋愛ではなく結婚のタイミングと言えるかもしれない。本人もそれを否定しない。

「できれば今の彼氏と結婚したいです。でも、無理ならば別の人とでも構いません」

 

理想の結婚相手は、酒好きの父親と仲良くしてくれる人

 

では、結婚に必要な「相性」をハルカさんはどのように考えているのか。問うと、意外な答えが返ってきた。

「うちの実家は田舎なので肉親のつながりは濃厚です。結婚するときは両親にちゃんと報告して認めてほしいと思います。一番の条件は父と仲良くなることでしょうか。恋人にする人も無意識のうちにそういう人を選んでいる気がします」

進学で上京する前に実家にいた頃は父親と折り合いが悪かったと振り返るハルカさん。しかし、成人してお酒を飲むようになって「私はこの人の子どもなんだな」と感じる機会が増え、今では親を大切に思うようになった。

「父も酒好きで、飲んだら熱く話す人なんです。それを嫌な顔をせずに聞ける人が旦那さんなら言うことないですね。飲んだら気持ち良くなって饒舌になるのは私も同じです。気づいたら知らない人の家で寝ていた、なんてエピソードまで父と似ています。それが嬉しくて父に話したら、『お前は女だろう。オレとは意味が違う』とギョッとした顔をされましたけど」

楽しそうに笑うハルカさん。東京に一人で行ったから父親のことを客観的に見て、再び愛せるようになったのだろうか。

自分だけではなく、親と仲良くしてくれるパートナーを見つけたい――。そんなハルカさんがいずれ築く家庭は笑いと愛情に満ちたものになる気がする。

 

※登場人物はすべて仮名です。

  

 

イラスト:吉濱あさこ http://asako-gaho.com/