第二十二回 結婚して、「一生懸命にやらなくてもいい女性社員」にはなりたくありません

 

 

 

いま結婚したら私の居場所がなくなる!

 

目立つほど美しく、感じも良くて、責任感を持って働いている女性に恋人すらいないことは珍しくない。もし彼女たちが男性だったら、周囲の女性が絶対に放っておかないだろう。

愛知県内の機械メーカーで正社員として働いているマリコさん(37歳)に言わせると、仕事熱心な女性は結婚のタイミングを逃しがちだ。彼女自身、20代のときに付き合っていた男性たちとは結婚する気持ちになれなかった。相手の問題ではなく、自分と会社の関係を考慮した結果だった。

「うちの会社はちょっと男尊女卑なのです。女性社員が結婚をすると、『一生懸命にやらなくてもいい人』になってしまうケースばかり目にします。与えられた仕事はきっちりやるけれど、会社の今後のことを考えて一歩踏み出すようなことはしません。結婚した女性が自らそうなってしまうのか、それとも会社がチャレンジングな仕事を与えなくなるのか。原因は謎ですが、傾向としては明らかです。入社以来、そんな状況を見て来たので、『実績を積まないうちに結婚なんてしたら一生懸命働きたい私の居場所がなくなる!』と思ってしまいました」

それから10年以上の歳月が経った。働き方改革や女性活躍の流れを受けて、マリコさんは今や会社の顔である。新規プロジェクトの責任者を次々と任され、メディアに出ることも少なくない。

誰も経験したことのないプロジェクトを成功させるためには、社内でデスクワークをしていても仕方ない。自ら生産や営業の現場に赴き、社外の人脈とも密に接して、がむしゃらに結果を出さなければならない。そのため働く時間帯は自由になる。在宅でできる作業も多い。今の立場ならば、家庭生活との両立も可能だとマリコさんは感じている。

 

接待の場に呼ばれやすい独身30代。完全にホステスです

 

しかし、めぼしい同世代の男性はほぼ全員が既婚者だ。37歳になったマリコさんには恋人もいない。

「気づくと、社内で新しいことを任されて忙しくしているのは独身の30代女性ばかり。部下は1人だけだったりするのでみんなヒーヒー言いながら働いています。女子は真面目なので仕事にのめりこみがちなんです。そんな私たちを会社はフラッグシップにしようとしています。それ、間違っていますよね。家庭と仕事を両立している女性を育てるべきなのに……」

完全に経営者目線である。しかも、美しくてコミュニケーションン能力も高い。会社が広告塔として重宝するのもうなずける。

「私たちは役員の接待の場に呼ばれることも多いんです。仕事をわかっている、見てくれも悪くない、場を盛り上げられる、帰らなくちゃいけない家庭もない。誘いやすいのは当然でしょう。仕事だと思ってお伴していますが、完全にホステスですよ」

つい会社に尽くしてしまうマリコさんにも限界が見えるようになった。いろんなことを任されるが、すべて自分でやるのは無理なのだ。しかし、マリコさんが仕事を安心して頼めるような社員は数少ない。

「うちの会社には手を正確に動かす人はいっぱいいます。でも、脳が圧倒的に足りていないんです。ちゃんと考えて戦略を立てられる人も少ないし、戦略を現場がやりやすいように落とし込める人も不足しています」

 

男性を30人揃えて満足し、婚活自体に飽きてしまった

 

特定の恋人がいないことに関しては、マリコさんにも問題がある。現在の生活が多忙かつ充実していることを言い訳にして、等身大の男性とちゃんと向き合うことを避けて来たのだ。

30歳を少し過ぎた頃、象徴的な出来事があった。同級生たちが次々に結婚していくことに焦りを感じたマリコさんは、友人に誘われて婚活パーティーに参加した。結果は独り勝ち。30対30のパーティーで、なんと28人の男性から交際希望のカードをもらった。

「私にはコレクション癖があります。残りの2人も欲しくなって、自分のほうから連絡先交換を申し出ました。30人揃って満足してしまい、婚活自体に飽きちゃったんです。その後、誰とも連絡を取り合いませんでした」

婚活の目的は複数の異性からモテることではない。たった一人の気の合う相手と巡り合い、尊敬と愛情を少しずつ深めていくことだ。当時のマリコさんはそんな簡単なこともわからなかった。しかし、今は過去の愚かさと間違いに気づいている。卑屈ではなく謙虚な気持ちになったとき、本当の意味でのパートナーを探せる気がする。

 

※登場人物はすべて仮名です。

 
 
 
 

イラスト:吉濱あさこ http://asako-gaho.com/

 

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