第二十四回 壮大な景色を一緒に見る彼氏が欲しい。思い浮かぶのは女友だちではありません

 

 

 

平日は基本的に仕事しかしていません。休みの日は寝るだけです

 

名古屋市内にある和食店で、機械メーカーで正社員として働くマリコさん(37歳)と食事をしている。時刻はすでに21時ごろ。食後、マリコさんは会社に戻って事務仕事をする予定だという。平日とはいえ、尋常ではない働き方だ。

「平日は基本的に仕事しかしていません。朝は普通に8時出勤で、帰宅は午前様になることがほとんどですね。1週間の平均的なスケジュールですか? 週に1回はお客さんにプレゼンテーションがあり、1日は東京などに出張しています。残りの時間は営業の手伝いをしたり、会議をしたり、パソコンで作業をしたり。土日のうちどちらかに仕事が入ることも少なくありません。だから、休みの日は寝ています。このままでは仕事と睡眠だけの人生ですね。イカンなあ」

笑いながらビールを飲むマリコさん。会社に戻っても自分一人なので軽く1杯やるぐらいは問題ないらしい。バブル時代の猛烈社員みたいな女性である。

「私は実家暮らしですが、4年前に母が猫を飼い始めたんです。独身女と猫の組み合わせは危険ですよね。終わりだな~と思いました。休みの日も猫と遊んでいたら時間が過ぎてしまうからです!」

マリコさんは会話上手の美人であり、いわゆる婚活の必要性はまったく感じて来なかった。今でも出会い目的の行動は気が進まない。

しかし、このままでは仕事一色の人生になってしまう。飲み会に誘われたら仕事を調整して参加し、「外の世界」に触れるようにしよう。最近のマリコさんはそのように決めている。

 

気を使えない、頭が悪い、つまらない。最悪の男たちとの合コン

 

本連載の趣旨である「恋愛のタイミング」でいえば、かつてのマリコさんは偶然をこよなく愛していた。学内や社内といったコミュニティ、もしくはその延長線上で知り合い、お互いの性格や能力をよく知ったうえで、自然と惹かれ合うのだ。タイミングなどは考えずに済む恋愛である。

しかし、大学はとっくの昔に卒業し、仕事で関わりのある男性も既婚者ばかり。自らタイミングを作り出さなければ一生独身のままだ、とマリコさんは感じ始めた。だから、後輩からの合コンの誘いを快諾した。

「1年前にやった合コンはひどいものでした。女性は私も含めて社内の4人。相手も同じく30代半ばの男性4人でしたが、職業を確認する気になれないほどの人間性の低さでした。悪い意味で軽くて、薄いんです。気も使えない、頭が悪い、つまらない。最悪でした」

辛辣な言いようだが、マリコさんは合コン自体を否定はしなかった。すると、その後輩が2回目に誘ってくれた。わずか2か月前の話である。

「今度は大当たりでした。相手はMR(製薬会社の営業担当者)たち。年齢は30代後半で、みんな仕事をバリバリやっています。その姿勢があまりに熱くて面白いんです。私が部下の育成に悩んでいることを話したら、それぞれの指導法を披露してくれました。すごく楽しくて、友だちになりたいと思い、リーダー格の人とつながっています」

ただし、まだデートには至っていない。お互いに忙しい日々の近況報告をLINEでやりとりする程度だ。実家暮らしで愛猫もいて、仕事も充実しているマリコさんは、基本的には寂しくない。一方ではプライドも高いため、自分のほうから積極的にアプローチする気にはなれないのだろう。

 

絶対に譲れない条件。それは名古屋に住み続けること

 

「自分のファミリーが欲しいな、と思うときはありますよ。出張や旅行中に涙が出るほど壮大な景色を見たときなどです。同じ景色を一緒に見る彼氏が欲しいと強く思います。そういうときに思い浮かぶのは女友だちではありません」

マリコさんなりに結婚願望が高まっているようだ。今回のように良き相手と出会えるならば、合コンなどの「不自然なタイミング」でもかまわないとも思っている。

ただし、絶対に譲れない条件がある。年老いつつある両親がいて、自分も慣れ親しんだ名古屋を離れないことだ。

「できれば地元のオーナー社長がいいです。サラリーマンでも勤務先の本社が名古屋だったりするとキュンと来ますね」

筆者も愛知県在住だが、この土地にはマリコさんのような「地元志向」の人が異常に多いと感じる。温暖で交通の便が良いだけではなく、自動車産業を中心とする雇用が充実しているため、他の土地に住む選択肢が頭にないのだ。結果として家族のつながりがやたらに強く、社会人になっても実家を離れないのが当たり前。結婚した後も、実家の敷地内に「はなれ」を作ってもらったりする。親子がいつまでもベタベタしているのだ。

つい愚痴になってしまった。最後にマリコさんの話に戻す。仕事熱心で、見た目は爽やかで、名古屋に住むことを希望してくれる――。この3条件だけでも、十分に満たす独身男性の数は極めて少ない。ならば、女性のほうが積極的に動いて、質と量を確保するしかない。マリコさんには引き続き「外の世界」と接触しつつ、気の合うMR氏とも自ら誘って食事に行くことをお勧めしたい。

 

※登場人物はすべて仮名です。

 

 

 

 

 

イラスト:吉濱あさこ http://asako-gaho.com/