第二十五回 女友だちとは休日のランチで十分。夜に会いたくなるのはやっぱり男の人です

 

 


仕事で忙しくしていると、夜は誰かに会いたくなる

 

東京・日本橋にある和食店に来ている。和食と言っても椅子席のみで、クラフトビールと日本酒でつまみを食べるという趣向だ。日本酒選びは店員にお任せするのが原則の店なので、客がウンチクを披露する必要はない。仕事帰りの美女を気軽な食事に誘うにはちょうど良い店だと思っている。

都内のIT企業で正社員として働くカナエさん(35歳)は、2年前に関西から上京した。ほどよく丸みを帯びた女性らしい体型と、人懐っこい笑顔。ゆるめのウェーブがかかった髪は柔らかく肩にかかっている。仕事でも顧客企業との交渉を担当しているためかコミュニケーション能力は高い。たいていの男性はカナエさんと食事して心楽しく感じることだろう。

「人恋しくなるタイミングですか? 仕事で忙しくしていると誰かに会いたくなりますね。おしゃべりしながら食事するだけで満足するときもあれば、手をつないだりしてその先に進むこともあります。女友だちとのおしゃべりは休日のランチで十分です。結婚している人も多いので夜まで拘束しようとは思いません。夜に会いたくなるのはやっぱり(独身の)男の人です」

ビールを少しずつ飲みながら、企画趣旨をくんだ打ち明け話をさっそく聞かせてくれるカナエさん。現在は比較的忙しい状況にあるという。

「他社と共同で受けている大きなプロジェクトに入っています。億単位のシステムを売るので要件を慎重に詰めなければなりません。お客さんがこのシステムを使ってどんなことをしたいのかをきちんと把握して、エンジニアなどのメンバーに伝えるのが私の役割です。お客さんはITの専門家ではないので、私たちのほうが材料を準備して、お客さんにいかにしゃべってもらうかが大事だと思っています。でも、まだ言葉を引き出し足りていません。どんな材料が足りないんだろう……」

 

LINEですら話がかみ合わない元商社マンとのデート

 

カナエさんは仕事上の悩みを語りながらも嬉しそうだ。基本的に働くことが好きなのだろう。ちなみに、現在の会社は上京してから2社目。1社目は待遇面で不満があり、自分の能力を十分に生かせないと感じて早々に見切りをつけた。

自分が前のめりで働いているだけに、男性にも同等以上のテンションで仕事に向き合っていてほしい。ただし、そのような30代40代の独身男性はワーカホリックだったりする。良き相手を見つけ、恋愛関係を継続するのは至難の技だ。

平日は20時頃までみっちり働いていることが多いカナエさん。手軽にデート相手を探せると友人に聞いて始めたのが婚活アプリだった。

「体目的の人が男女ともに多いと感じたので、いまは利用していません。でも、LINEを交換した男性が数人いて、それぞれとたまに会っています」

そのうちの一人が元商社マンのケイスケさん(38歳)。バツイチの独身男性だ。イケメンな外見はどうでもいいと思うカナエさんだが、独立開業して貿易関連の仕事をしているところには魅力を感じる。

「生き生きと働いている男性はいいですね。でも、ケイスケさんとはフィーリングが合いません(笑)。LINEですら話がかみ合わないんです。例えば、私が食事に誘ったとします。仕事を理由に断られたら、『忙しいなら仕方ないね』と返すのが一般的ですよね。そうすると、彼からは『忙しくないよ』なんて返信が来るんです。なんだかおかしいやりとりですよね」

 

遊び慣れた彼。「粘着質」でないところが心地良い

 

アプリで知り合ったのが昨年の夏。それからカナエさんとケイスケさんは「月に1回、会うか会わないか」という微妙なペースで将来性のないデートを重ねている。

「最初にお酒を飲みに行ったときに、『うちに来る?』と誘われました。ちゃんと付き合ってくれるのかと聞いたら、『それを決めるのはまだ早いよ』といなされたんです。遊び慣れているなと思いました。今では私も彼と真剣に付き合うつもりはありません。セフレみたいな関係は好きじゃないけれど、お互いの都合がつくときは会っています」

カナエさんによれば、ケイスケさんの美点は「粘着質ではないところ」だ。恋人ではないカナエさんを束縛しようとはせず、それでいてカナエさんが距離を置こうとするとすかさず連絡をして来る。確かに遊び慣れた男性だ。

2年前に単身上京して、忙しく働くカナエさん。旅行などの趣味も多くて、一人で寂しいと感じることは少ない。でも、日々の仕事の疲れを癒すためには男性のぬくもりを必要としている。カナエさんはケイスケさんと似た者同士なのかもしれない。

 

※登場人物はすべて仮名です。

 

 

 

 

 

イラスト:吉濱あさこ http://asako-gaho.com/