第18回 韓国でも本を読む人はモテないんですよーー元書店員R君の話

 

 

ここ数年、韓流にはまって韓国に行きまくっている筆者ですが、ソウルで元書店員の青年、R君に出会いました。

ひと回り年下の彼女と数年間の同棲を経て入籍したばかりの新婚さんが語る、お隣の国の本とモテ事情は?

ちなみにR君は日本語堪能。現在は通訳の仕事等をしています。

 

——ご結婚おめでとうございます。本の整理たいへんだよね、結婚するときどうした?

 

いやあ、どえらいエロ本とかあって、しまいこんでますよ。奥さんには見せられない。エロいと思って買ったわけではないんですけど、写真集が好きなんで、自然にヌードの本が多くなって。

 

——どんなものがあるんですか?

 

アメリカだったかヨーロッパだったか「キリマンジャロ」っていう写真集のシリーズ本があるんです。背が分厚い箱みたいな本で。ひろげるとA2くらいの大きなポスターが挟み込まれているんです。2010年ごろ、1年に2〜3号のペースで10号くらい出たかな。

 

上半身ヌードのポスターが入っている号が、特にいいんですよ。カバーがマルボロのパロディみたいなデザインで、脇に抱えるとでっかい煙草を持っているように見えるんです。

 

——おしゃれですねえ。

 

そのポスターをひろげると、ちょうどヌードが等身大くらいになるわけですよ。でかいから、おっぱいの産毛なんかもしっかり表現されていて……もう目と目が合わせられないですよ。

 

でもね、大きな本ってずるいと思うんだよね。本を作る人に対する文句ですけど。みんな、でかく作りたいんです、目立つし。とくに写真とかは、同じ作品でもでかくプリントして注目をあびたいんですよ。人間の欲望と欲望がぶつかりあう……そして、まず本屋が困る。重くなるし、場所をとるし。

100%とは言えないけど、でかい本をつくる人は、自己顕示欲が強いんじゃないかな。私みたいな人間は、ぜんぜんそんな欲求がないです。自分がやるなら……ハガキサイズくらいでいいです。

 

あと、私がもし写真家で気合いいれた写真集を作ったら、本に手袋をつけますよ、2〜3枚。見るときに指紋ついたり、汚くなるじゃないですか。

 

——なんという熱い思い……お気に入りの写真集は何度も何度も見るほうなんですか?

 

いや、買っても1回も開いたことがないです。ずっとシュリンクがかかったまま。このまま死ぬまで封を開けられません。

 

——開こうよ?!

 

書店員時代は見本で中を見られたからいいんです。店で買って、家に持って帰って、開かない。

まあ、奥さんには見せられない本もたくさんありますから。エロ写真集……とまではいかないけど、意識せずともヌードがけっこう入っちゃってるんです。その結果、エロいアートブックとかがめちゃあって……ほぼお蔵入りですね。

ソウルのおすすめ喫茶店「ハクリム(学林)」のコーヒーとチーズケーキ(撮影はR君)
ブックギャラリー ポポタム

——話は変わって、韓国では本を読む人ってモテますか?

 

どうですかね……モテるというより、人間として尊敬の対象になるというか。昔の彼女は本をいっぱい持っていて、本棚見るだけで尊敬しましたね。200ページの本を2〜3時間くらいで読めるなんてすごいなーと思ったりして。

 

そもそも「本をたくさん読んだらモテる」って、ぜったい違うでしょ。どちらかというと、内面からへんなものが生まれるんじゃないですか? 自分のなかで、たくさんの本の魂が混ぜ合わさって、ケンカして、悪魔やヘンタイになる。

 

——詩的な表現です。たしかに、一理あると思います……

 

ぼくの友達は本を読まない人が多いんですが、何というのかな、純粋だなーと思うんですね。もちろん見下しているわけじゃないですよ。

家に行っても本がない。子どもがいれば絵本があるけど、書店で1冊1冊選んだものではなくて、偉人伝とか昔話のセットとか。

そんな人どうしが出会って、恋愛をして、結婚をする。本はないけど、いい家具やいい家電がある。賢いと思います。

 

本やCDやLPばかりを持ってる人なんて、家が火事になったらどうしようとか、引っ越しするときの心配やら、たいへんですよ。冷蔵庫も掃除機も安っぽいもの使って。

 

——わが家が、そうです……

 

家電にすぐ現れますね。最近の家電は性能がいいのは高いですよ。本とかLPとか買う人は、そんな家電を使うのなんか無理なんです。エアコンも中古のを買って、「今年の夏は短い」って信じて。

 

——うう……完璧な日本語で、本とモテの関係としては救いのない話を、ありがとうございました!