第二十六回 がむしゃらに働いているとストレスを発散したくなるのは男も女も同じです

 

 

 

私に連絡するのは、奥さんと別れてからにしてください

 

婚活アプリをはじめとした気軽な出会いの場はたくさんある。しかし、恋人すらいない男女が多いのはなぜだろうか。玉石混交の中から「磨けば玉になりそうな原石」を自分なりに見つけて、相手からも選んでもらい、お互いを少しずつ磨いていく根気のようなものが足りないのだと筆者は感じる。

原石にすらならない「石ころ」を拾ってしまう場合もある。IT企業で勤務する色っぽい美女であるカナエさん(35歳)は、婚活アプリなのに既婚者と出会ったと振り返る。

「私はイタリアに留学していたことがあるので、できればイタリア人とお付き合いしたいと思っていました。会話も楽しいイタリア人男性と知り合えたと思ったら、日本人の奥さんと別居中みたいなんです。別居中の部屋を引っ越すと聞いたので放っておいたら『どうして手伝おうとしないのか』と叱られました。なぜ恋人でもないのに手伝う義理があるのでしょうか。『奥さんとちゃんと別れてから連絡して来てください』と伝えました」

 

転職先で多忙になったら、「がっつき系」に変身した彼

 

次に同じアプリで知り合ったカズオさん(43歳)とは今でも交流が続いている。彼は正真正銘の独身。それでも「交際」ではなく「交流」なのは、オズオさんが態度をはっきりさせないからだ。

最初に会ったのは昨年10月。カズオさんは「クマさん」のような外見で8歳年上だったがカナエさんは気にならなかった。むしろ、仕事に一生懸命で真面目そうな雰囲気に好感を持った。

「接待みたいな雰囲気の食事で、恋愛モードは感じませんでした。年下の私は相手にされていないのかな、と思いましたが、その後で毎日のようにLINEでやりとりする仲になったんです」

カズオさんが態度を一変させたのは年が明けてから。転職先でポジションが下がり、時間の自由がきかなくなった。LINEも滞り始め、心配したカナエさんが久しぶりに連絡を取ったところ、「オレはめちゃくちゃ忙しい!」となぜかキレ気味の返信があった。

「会ってみたらすぐにラブホテルに連れて行かれました。急にがっつき系になったんです。本性を出して来たな~と思いました」

カズオさんは「付き合っている」とは決して明言せずにカナエさんと食事をしてセックスしたがる。責任を負うつもりはないけれど、近くに女性がいてほしいのだ。カナエさんは理解を示す。

「がむしゃらに働いているとストレスを発散したくなりますよね。私もそうなので彼の気持ちはわかります。『まあ、しょうがないかな』と思ってときどき会っています」

カナエさん自身、IT企業で大きなプロジェクトの顧客担当をしており、プレッシャーと戦いながら前のめりで働いている。結婚を急ぐつもりはないけれど、仕事で疲れた夜には会話と肌触りを一緒に楽しめる男性がほしくなる。だから、カズオさんと会い続けているのだ。

 

交際してもいないのに粘着質な彼と距離をおきたい

 

筆者はカズオさんとほぼ同い年なので、「責任は負いたくないけれど親密な女性はほしい」という彼の気持ちはわかる。我々の世代は自信も勢いもないのだ。しかし、自分よりも稼げて「男気」もある女性と再婚して7年になるいま、カズオさんに言ってあげたい。女性と結ばれることに責任なんて感じる必要はないのだ、と。

未知や未経験のことには不要な恐れを抱くものだ。実際にやってみると、意外と気楽だったり自由だったりする。例えば、カナエさんのような女性が結婚相手に求めるのは「私が仕事を続けられること」のみであることが少なくない。家計も折半できるので生活コストがむしろ減ることもある。それぞれの自由な時間は尊重し合えばいいけれど、パートナーと一緒に食事をしたり旅行したりするほうが新鮮で楽しくなってきたりする。なお、どうしても別れたくなったら離婚をすればいいだけだ。

女性から依存されるのを恐れ過ぎる男性は、自分のほうが依存体質だったりする。実際、カズオさんは恋人ですらないカナエさんを束縛する傾向にある。

「真夜中のLINEに返信をしないと怒るんです。そんな時間は寝てるよ、と言いたい。『カナエは言うことを聞かないな』なんて叱られますが、私は彼に合わせていると感じています。『そう思うなら、言うことを聞いてくれる女の子を探してください』と伝えました。『お前がいいんだよ』なんて返信をくれましたが、隠れオラオラ系で粘着質な彼とは距離をおこうと思っています」

お互いに納得しているのであれば、「友だち以上、恋人未満」もかまわないと筆者は思う。しかし、身勝手な粘着質になってはいけない。刹那的な関係であっても、大人同士には思いやりとマナーが必要なのだ。

 

※登場人物はすべて仮名です。

 

 

 

 

 

 

 

イラスト:吉濱あさこ http://asako-gaho.com/