第二十七回 結婚して実家近くに住む妹夫婦には子が2人。私が結婚を急ぐ理由はありません

 

 

 

会うならば男性の家で。私が帰りたいときに帰れるから

 

子どもを産み育てる意思が強くないのであれば、結婚を急ぐ理由は少ない。家電やITがますます進化し、寂しさを紛らわせる手段が溢れ、一方では男性の所得が下がっている現代。生き延びるために仕方なく結婚する女性は少なくなった。下手な相手を選べば、不快なだけではなく生活の不安定さが増すだけだ。

都内のIT企業で正社員として働くカナエさん(35歳)は、そのように考える女性の一人だ。親しい友だちがいるし、語学学習や一人旅などの趣味もある。一人暮らしも気に入っている。

「30歳になる頃のほうが結婚願望は強かったですね。同世代の友だちが次々に結婚した時期です。関西の地元に住んでいたし、長女として親を安心させたいと思っていました。その後、妹が先に結婚して2人の子どもに恵まれ、実家の近くに住んでくれています。長女としての責任から解放されちゃいました(笑)」

2年前に上京したカナエさん。子どもがほしいという気持ちはあまりない。忙しく働いていると、夜を楽しく一緒に過ごせる男性がたまにほしくなるだけだ。だからこそ、婚活アプリなどの軽めな出会いの場を選んでいる。

「でも、自宅に呼ぶことはほとんどありません。私が男性の家に行きます。そのほうが帰りたいときに帰れますから。東京にはたくさん人がいるのに、大事な一人時間がなくなってもいいぐらい好きな人に出会うのは難しいんですね」

 

「難しい言葉を知っていてすごいね」なんて言わないで

 

独身男性からすると、30代半ば以降の女性は軽々しく誘えない相手に感じる。付き合ったらすぐに結婚と出産の話になると予感するからだ。しかし、実際にはカナエさんのような女性も少なくない。気楽な一人暮らしをできるだけ長く続けたいと思い始めているタイミングなのだ。

そんなカナエさんなので、セフレのような関係を続けている男性が2人もいる。お互いに独身なので、誰かを傷つける心配はない。ただし、カナエさんは遊び回りたいタイプではない。結婚は視野に入れなくてもいいので、ちゃんと向かい合える恋人はほしいと思っている。

「男性の見た目には全然こだわりがありません。友だちからも『あの人がOKなの?』と驚かれるぐらいですから。食べ方が汚い人だけはNGです」

では、好みのタイプはどんな男性なのか。カナエさんのように前向きに働く独身女性が合言葉のように口にするのは「仕事を頑張っていて賢い人」だ。これには覇気のない男性を避けるという意味も込められている。

「仕事に没頭していると、プライベートでもついIT用語を使ってしまうことがあります。受け流してくれればいいのですが、『難しい言葉を知っていてすごいね』なんて言われると引いてしまいます。私よりすごい人は世の中にいっぱいいます。男性のことはやっぱり尊敬したいです」

 

一番話しやすい彼。私のこと、どう思ってる?

 

いま、カナエさんが一番「話しやすい」と感じているのは、昨年の夏に婚活アプリで知り合った同い年のタカヒロさんだ。読んでいる本の系統が似ていて、楽しく対等なおしゃべりすることができる。

「こないだはイチローの引退について延々と話しました。女子と話しているみたいな雰囲気なのに、男性なので切れ味が鋭い意見もあります。でも、彼のほうが恋愛モードにはならないのでいまだにメシトモ(ご飯を一緒に食べるだけの関係)状態です。月1、2回のペースで会っています」

メシトモだというタカヒロさんだが、帰り道に手をつないだことはあるらしい。彼は結婚をしていて、カナエさんとの会話と疑似恋愛をのんびりと楽しんでいる可能性がある。婚活アプリはそのような既婚者が混じりやすいのだ。一度、彼が本当に独身なのかを確かめたほうがいいと思う。

独身者である場合、恋愛モードを深めるためにはどうすればいいのだろうか。次に手をつなぐことがあったら、思い切って体もくっつけてみたらどうか。人懐っこい笑顔が特徴のカナエさんならばいやらしさなく実行できる気がする。

 

※登場人物はすべて仮名です。

 

 

 

 

 

イラスト:吉濱あさこ http://asako-gaho.com/