第二十三回 「普通と常識に寄生されない」

 

 

 

 

人並みにモテたい…普通にモテたい…と自身を世の平均値に寄せてゆきたい皆さん!
…けど普通って何…?自分個人ではなく世間に、実在しない空気に依存した物差しで測りがちな者共よ…ラジオ番組の電話人生相談で相談者が並び立てる「普通」や「常識」を聞いて…そして我が身を振り返れ…!


「普通はって言い出したらもうお互い血をみるって知ってた…?」

 

 

低学歴不安定職種な男性と付き合ってる孫娘に別れてもらいたい70代祖母。

 

「常識を考える仕事場に勤めているなら、そんなことしない筈」

「常識」に準拠させることにより、私じゃなく「常識」がそう言わせるんですと自分の手を汚さず相手職業及び本人自体を否定することに成功するテクニカルパワー。祖母…こいつは相当の手練れ…。

 

 

41歳の娘がネットで知り合った離婚歴と子供がある50代男性と別れさせる方法を教えて欲しい母親。

 

「親としてはやっぱし絶対いずれうまくいかないと思うし!」
「やっぱしおかしいと思うんですよね!」
「世間の常識つうものがあるでしょ!」

2人がうまくいく筈がない、との強い語調の根拠は「常識」でありそこに「やっぱし」と「絶対」を叩き込み、論の強化を図る母親。
そして別れて欲しいではなく「別れる方法を教えろ」一択なところがそれ以外の選択は受け入れぬ強い意思を感じた剛の者…。

 

 

酒乱の息子が暴れて警察沙汰になり実家で引き取ったがなんで自分の家から出されなくてはならないのか出ていくなら生活費貰ってる立場の嫁の方ではないかと憤る母親。

 

「頻繁に家で暴れるの?」
「普段はしないですねはい!普通は普通の家庭で!」

普通じゃない時以外は普通とは。
禅問答に似たやりとりに「普通」の意味がぐんにゃりと揺らぐ不定形の世界にぶちこまれるリスナーこと私達…。

「出来ちゃった婚でして、普通ならこちらが出来さしてすいませんでした!て謝るけど、私は子供作らないように言ってましたんで!!!」

もう普通じゃない口調と論調で連呼される「普通」に、「普通」の深淵を覗いてしまって取り込まれてしまいそう…普通とは…。
(そしてそれを書いている私自身も思わずしてこの上の文章内に「普通」を持ち出してしまったこの罠にお気づきか…普通、恐ろしい…)。

 

 

息子が人に言えない職業なので辞めてほしいと願う母親。

 

「えと、職業の事でちょっと悩んでまして、まあ人に聞かれても答えられないような、あの、仕事してるんです」

「そうですね、だからあの、何の仕事してるの聞かれてもちょっと、絶対言えないですね」

言っちゃいけない知られちゃいけない話しちゃいけないデビル息子、その職種とは。

 

「もっともっと普通な、まともな仕事をしてほしい」
「貴女が思うまともって?」
「もっとなんていうのかしら…固い仕事?」
「もっと具体的に」
「ほんとに、何してるのと言われた時に、答えられるような仕事だったら、なんでもいいというような気持ちです…!」

裏返せばその職種を通して自分の息子を、普通及びまともではないと責めていること、子に対する母の行為及びメッセージとしてとしてその残酷さを指摘する回答者。

 

「私が世の中に受け入れられる為に貴方は困った存在だ、って事でしょ?世間体が一番大切なんだよねえ、貴女。自分しか大切じゃないんだよね」

「普通」は正解な筈と信じていたのにその物差しを所持していたかどで責められる結果となった母…(あと息子の職種は派遣型風俗店の送迎運転手でした!)。

 

 

娘のBFが親の虐待から逃れるため家を出て生活しており、どうケアをしていけばいいか、また養育を放棄している親の心情が解らない、という母親への回答。

 

「ケアの意味でもBFに”普通の親ならこうだよ”とか言わない方が良いと思うんですよ。”普通だったら”と言う事は何の励みにもならないんです」

「貴女としては母親という立場にあって”私だったらこうする”というのが出てくると思いますけどそれを当て嵌めて”普通だったらこう”という事言ってみたところで何も答えは、出てこないんですよ…」

「普通」が強制しがちな「べき」までの危険な道筋を注意する至極の回答…。

 

 

人生相談において、これは私情じゃないんですよと、自身が責められなくすむガード用に「普通」や「常識」を持ち出して皆の同調と援護を求めにきたけど回答者による返り討ちそして滅多討ち、てパターンは定期的な風景です…ラジオ前ですがきょうも返り血がすごい…血しぶきで前がみえない…。

私じゃない…「常識」や「普通」がそう言わせるの…と無抵抗に身を委ね、チューチューと自分自身の軸汁を吸われてゆく「普通」と「常識」に寄生された宿主…それでいいんですか…な皆さん今一度、自身が所持してる各物差しの確認を…!

物差しを計り直せ…!