第二回 男子高生の考える「モテ理論」は錬金術よりも荒唐無稽

 

 

■男子高生の考える「モテ理論」とは

 

「一生モノのモテ理論」というキャッチフレーズがついたサイトで連載しておきながら何ですが、男子高に「モテ」もクソもあったもんじゃない。

 

これが女子高だったら、同性同士であっても「センパイの髪、長くてステキですね!(はーと)」みたいなことがあるとかないとか聞くが、男子高で「センパイのヒゲ剃り跡、ジョリジョリしてサイコーっす!(ウホッ!)」みたいな話は聞いたことがない。

 

共学校の連中が「モテ」にうつつを抜かしている時間、ボクら男子高ユーザーは勉強や芸術、スポーツなどに打ち込み、自らを高めることに費やしていたのだ。後々、この差は大きいはず!

 

……と、言いたいところだが、男子高生は男子高生で、校内に女性がいなくても、何とかそれ以外の場所でモテる方法がないかと頭をひねりまくっていた。

 

ただ、共学校だったら自分なりに考えた「モテ理論」をリアル女子にぶつけ、トライ&エラーで「モテ」への精度を上げていけるのに対し、男子高はバットもボールもない野球部状態。

 

いっくらイメージトレーニングを真剣にやったところで、バット&ボールに触ったこともない野球部が甲子園に行けるハズがないのと同様、女性としゃべる機会すら皆無の状態で「モテ」について考えてたところで机上の空論もいいところなのだ。

 

錬金術の方法や、永久機関の作り方に挑んでは散っていた先人たちのように、数多くの荒唐無稽な「モテ理論」が生み出されていた男子高生時代。ボクがモテるために実践していたのが「むやみにギターを持ち歩く」というテクニック。

 

学校内が女人禁制の刑務所状態である以上、女子からモテるチャンスは、登下校の最中にたまたま出くわすくらいしかなかった。

 

しかし自転車通学だった上、学校の立地も『ポツンと一軒家』なので、女子とばったり出くわす可能性は、はぐれメタルの出現率よりも低い。もちろん、そんな低確率で遭遇したとしても、話しかける勇気なんてないし……。

 

そこで、数少ないチャンスを確実にゲット・ザ・グローリーするため、「話のきっかけ」となるようなアイテムを持ち歩こうと考えたのだ。

 

■ギター=モテという完璧な理論!?

 

時、おりしもバンドブームまっただ中。

 

多少顔面の造型がエキセントリックだったとしても、演奏力が動物なみだったとしても、バンドさえ組めばモテモテになれると言われていた時代。

 

残念ながら、ボクの家の近所にはライブハウスも音楽スタジオもなかったし、バンドを組むような友達もいなかった。しかし、ブームに乗っかって購入したエレキギターは持っていたのだ。

 

これをかついで颯爽と自転車を走らせていたら……。

 

「あの人、バンドをやってるんだわ!」

「ステキ!」

「抱いて!」

 

みたいなことになるのでは!?

 

いや、見知らぬ女性相手がいきなりそんなことを言ってくる確率は、宝くじ一等当選レベルだろう。

 

しかし、中学時代の同級生(女)とバッタリ出くわしたとしたら……!

 

「北村、バンドやってるんだ!? ちょっと弾いてみてよ」

 

みたいなことになってもおかしくはない。

 

そうなればもちろん、ジャララーン!(ギターの音)「キャー、付き合って〜!」うん、理にかなっている。

 

そんなわけで、毎日ギターをかついで学校に通うようになったわけだが、重いわ、疲れるわ、肝心の同級生(女)にはまったく会わないわ……。何やってるんだ、オレ。

 

ギターを持っている時に、女子に会いさえすれば……。会いたい……会いたい……。

 

当時の大ヒット曲、沢田知可子の「会いたい」を脳内でヘビーローテーションしながら自転車をこぎ続ける日々が続いたものの、さすがに心が折れてしまった。

 

そこで思いついたのが、「ギターケースだけ持ち歩いていれば充分カッコイイのでは?」説。

 

街で見かけるバンドマンの姿を思い浮かべて欲しい。

 

彼らは中身のギターを見せずとも、ギターケースを背負っているだけで「バンドマン」としてのアイデンティティをビンビンに放っている。

 

だったら、別に中身がなくてもオッケーなんじゃないの?

 

ただし、ボクが持っているギターケースは柔らか素材のソフトケースだったため、ギターを入れていないと、どうしてもネックの部分がヘコッと折れてしまい格好がつかない。

 

そこでボクは、ギターのネックにあたる部分に「突っ張り棒」を入れることにした。ケースのネック部分がピーンと伸びて、あたかもギターが入っているかのように見えるのだ。

 

完璧!

 

「突っ張り棒」入りギターケースを背負うボクは、周りの目からはギターを持ち歩くバンドマンにしか見えていなかったはずだ。

 

そして遂にその日は訪れた。

 

学校からの帰り道、中学3年生の時のクラスメイト・Iさん(そこそこカワイイ)と遭遇。

 

「へーっ、北村くん、バンドやってるんだね。意外!」

 

最高の展開だ。

 

「私もブルーハーツ大好きなんだ。どんなギターなの? ちょっと弾いて見せてよ!」

 

ギターを持ち歩いていなかったら、こんなに会話が弾むことはなかっただろう。ボクは自分の「モテ理論」が正しかったことを確信した。

 

……が!

 

ボクが背負っているのは突っ張り棒。どんなギターなのか見せることも、ジャラーンと弦をつま弾くこともできやしない。

 

「え……えーっと。ギターは日光に弱いから……」

 

逃げるようにその場を立ち去るボク。

 

脳内の西田敏行が泣きながら「だけどぉ〜ボクに〜はギターがない〜」と歌っていた。