Case1 夢を見ていた。前編

 

秋の夜長とは良く言うものだが、私にとって今年の秋の夜は途轍も無く長かった。

 

人よりも夜遅くまで起きているせいもあり、ベッドへ横になるのは大体夜中2時を回ってからだった。それでも、定時が無いので睡眠時間は6-7時間ぐらい取れていたし、日中の行動にも支障を来していなかった。

 

しかし、謎の焦燥感に襲われるようになってから、同じ睡眠時間でも。妙に身体が重い。今まで、寝起きでも即座に動けていたのに段々とそれが難しくなっていた。

 

今日もまた、そうだった。

 

時刻は、午前10時半を回ったところ。9時過ぎに覚醒してから、気が付けばとっくに1時間半も過ぎていた。幸いにも、今日はアポが無く、作業日だった。だからといって、ずっとベッドにいるわけにもいかない。それでも、身体に錘が乗っているような、ベッドが自分を離してくれないような、そんな感覚から逃げられずにいた。

 

(最近、外出が多かったから、疲れてるのかな)

 

ボーっと天井を見ながら、考える。時間はどんどん過ぎていき、あと30分程で午前帯が終わるまできていた。とにかく何か動かなければと、枕の横に置いてあるiPhoneを開き、来ていた連絡とSNSの通知に目を通す。

 

ライターを始めるきっかけは、Twitterだった。内容は、今も昔もよくあること。男女関係だ。始めた当時は、現役大学生が顔出しをし、所謂毒舌でそれらを呟いていたことが何故か人の好奇心を刺激したらしい。徐々にフォロワーが増え、ライターのスカウトが来たわけだ。

 

「インプレッション伸びないなあ」

 

しかし、そんな独り言が口から零れるぐらい、最近Twitterがスランプだった。SNSでは、次から次へと人の好奇を刺激する人たちが現れる。注目され、ネットの有名人に取り上げられ、どんどんフォロワーを増やしていく。ちょっと前まで、数百人しかフォロワーがいなかった知人がいつのまにか、5,000、10,000と増やしていく様も見てきた。ちょっと前までは、フォロワー戦国時代と言われていたけど、今やインフルエンサー戦国時代なのかもしれない。こんな風に客観視しているけど、私もその戦いに身を投じている内の1人なことには違いなかった。

 

インフルエンサー戦国時代は、とにかく目新しい事を続々とやっていかなければいけない。どれだけ人の目に引っかかるか、正直それが一番大事とも言える。私より文章が上手い人間なんて山ほどいるが、私はただ目立っていたから、たまたまフォロワーが増えた。仕事も貰えた。ただそれだけなのだ。けれど、人間には飽きが来る。その飽きが、私を苦しめている。

 

自分が大学生を終えた後から、フォロワーが伸びなくなった。いいねやRTの数も減った。たまにツイートが伸びることがあっても、フォロワー数に大きく影響することは無い。これは、インフルエンサー要素が強いライターにとっては、致命的だ。どうにか試行錯誤しても、色々試しても空回りする。反応が薄い。記事のシェアもイマイチ。まるで、世の中の人たちからスルーされているように思ってしまう。マッチ売りの少女は、こんな気持ちだったのだろうか。

 

(何か、何か発信しなきゃ。いくら身体が怠くても、これだけはやらなきゃ)

 

そう思いながらも、言葉がまとまらない。残り140字の空白が埋まらない。こないだの執筆時に似た感覚にまた襲われる。そうこうしてる内に時計の針は、12時を指した。私は、ベッドから起き上がるどころか、強い引力に引き付けられるかのように動けず、とうとう瞼さえもまた閉じてしまった。

 

 

(書けない。つらい。何も出来ない。つらい。何かしなきゃ生きていけないのに)

 

(つらい。助けて)

 

 

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