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第三回 90年代の進学校で番長を目指したA先輩

 

■男女別学って頭が悪くなると思う

 

 

「男女交際などにうつつをぬかさず、勉学に励もう!」という意図があるのかないのかは知らないが、世の男子高・女子高には、進学校が多いイメージがある。

 

ボクが通っていた男子高も県内有数の進学校……だったはずなのだが、実際には頭のおかしい人がすんごく多かった。

 

入学するまではいざ知らず、男女別学の学校って、通っているうちにみんなバカになっていくと思うのだ。

 

小学生の男子はまだ野生。脳内がウンコチンチンで満たされている大バカの極みだ。それが中学、高校と成長し、異性の目を気にするようになるにつれ「バカはモテない」と学習して、露骨なバカ行動は抑制されていく。

 

ところが、男ばっかりの「モテ」と無関係な世界で暮らしていると「バカはモテない」と学習する機会が失われてしまう。

 

それどころか、男だらけの集団では「変人=ヒーロー」という扱いになりがち。バカ行動が加速していくのだ。

 

下駄で登校してくるヤツ。異常にUFO知識があるヤツ。弁当代わりに炊飯器を持ってくるヤツ。なぜか休み時間中ずーっと四股を踏んでるヤツ……。

 

勉強ができてもスポーツができても、モテるモテないにはまったく関係がなく、男だらけで個性も薄まりがちな男子高生活。自分の存在感を示すため、必死で考え出した「個性」なのだろう。

 

そういう、トンチンカンな方向に突き抜けた「個性」を持った人は見ていて愉快だが、時に、心の底から「なんで!?」と突っ込みたくなるようなベクトルに突っ走ってしまう人もいる。

 

ボクらの1学年上のA先輩が考え出した「個性」は、番長を目指すことだった。

 

■なぜ90年代に番長を目指した!?

 

ボクが男子高生だったのはだいぶ昔……とはいえ、1990年代のことだ。

 

日本中で「校内暴力」が問題となったのは70年代から80年代初頭。

 

大流行した映画『ビー・バップ・ハイスクール』は80年代中盤だが、その中ではすでに「番長」とは、時代錯誤でバカにされるような存在だった。

 

『週刊少年マガジン』では90年代になってもコンスタントに不良漫画が連載されていたものの、時代劇のような様式美の世界という認識だ。

 

そんな90年代に、しかも冒頭に書いた通り、一応、進学校とされていた学校で、どうして番長を目指してしまったのか!?

 

とにかくA先輩は突然「オレはこの学校で番を張る!」宣言をしたらしい。

 

……が、ネットもない時代。学校内の情報伝達のスピードは遅く、ボクらが気付いたのは「何か変な格好で学校に来ている先輩がいる」ということだった。

 

さすがに長ラン&ラッパズボンという古典的な番長スタイルではなかったものの、短ラン&ボンタンという当時(よりちょっと前)の不良御用達スタイルで登校していたA先輩。

 

しかしウチの学校、一応制服というものはあったものの、別に私服で通っても問題がない自由な校風だったため、私服で通っている生徒が大半だった。

 

そんな中、短ラン&ボンタンとはいえ、ちゃんと学生服を着てくるA先輩は、むしろ真面目な生徒に見えてしまうのだ。

 

■「番長になってもモテないよ」と言ってくれれば……

 

 

次にA先輩がはじめたのが「番長になるため目立つヤツをシメていく」という活動。

 

いや、そもそもウチの学校、番長なんていたことないし、目指している人も皆無。A先輩が「番長になる!」というなら、みんなダチョウ倶楽部ばりに「どうぞどうぞどうぞ!」という感じなのだが、やはりバイオレンスで番長の座をつかみ取らないと気が済まないところはあるのだろう。

 

「A先輩が目立っているヤツを呼び出しているらしい」という噂は流れていたが、実際に誰かがその呼び出しに応じたという話は皆無だった。

 

「タイマンから逃げた!」とか言われても恥ずかしくもなんともないし、そもそも集団ではない、ソロの不良(なのかどうかもよく分からないが)なんてまったく怖くない。……そういう時代なのだ。

 

結局、番長への階段を上っているんだか上っていないんだかよく分からない状態のまま、A先輩はみんなから「バンチョー(半笑)」と呼ばれるように。後輩たちからも「バンチョー先輩(半笑)」と呼ばれていたのだから、完全にバカにされている。

 

それでもA先輩、ちょっと嬉しそうだったから大バカだ。

 

しかしバカは他にもいたのだ。

 

誰も恐れていなかったどころか、半笑いであしらわれていたA先輩の「呼び出し」。それを本気で恐れてしまったバカがいたのだ。

 

「Aが目立っているヤツを呼び出してボコボコにしている」という噂を聞いたU先輩は、メチャクチャ怖くなってしまったらしい。

 

怖くなりすぎてノイローゼ状態となったU先輩は「やられる前にやってやるー!」とばかりに、木刀を持って授業中のA先輩のクラスに乗り込んだ。

 

A先輩の待ち望んでいたバイオレンスな番長抗争勃発!

 

しかし、真面目に授業を受けていたA先輩は完全に意表をつかれて、なされるがまま、ボッコボコにされてしまった。

 

まあまあのケガを負ったA先輩は、しばらくの休みの後、すっかり番長熱も冷めたようで、普通の生徒となり、現役で大学に進学した。

 

一方、U先輩の行動は当然大問題となり退学に。

 

誰もなりたいと思っていなかった「番長の座」のせいで人生を狂わされてしまったU先輩。かわいそうに!

 

現在……というか、2000年代以降の学校では不良どころかヤンキーもほぼいないそうだが、その理由は「モテないから」。

 

あの時、A先輩に「今時、番長になってもモテないよ」と言ってくれる女子がいれば……。

 

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