第四回 セックス以外に何をやってたの? バブル時代のクリスマス

 

■バブル期のクリスマスはバカだったぞ

 

 

もうすぐクリスマス!

 

「モテ」を追求する読者諸氏にとっては、一年を締めくくる大イベント!

 

……と思いきや、最近じゃあハロウィンに推されてクリスマスの存在感は薄くなっており、バブルの頃ほど「クリスマス=セックス」という公式は当てはまらないようだ。

 

1980年代後半〜90年代のクリスマスは、そりゃあもうスゴかった。性のニオイがビンビンに漂っていた。

 

テレビからは山下達郎の「クリスマス・イブ」とワム!の「Last Christmas」が流れまくり。

 

「セックスしろ!」と洗脳された若者たちは、「マキシム・ド・パリ」(当時の高級レストランね)と「赤坂プリンスホテル」に数ヶ月前から死ぬ気で電話して予約を入れる。

 

プレゼントの「オープンハート」を買うためにティファニーの店舗に大行列。

 

赤プリ、ヒルトン、シェラトンあたりに泊まれない貧民は、「ラブホ難民」となって、「満室」じゃないホテルを探して歌舞伎町や円山町をさまよう。

 

こんな頭のおかしい狂乱を繰り広げていたのだ。セックスなんて家でしろ、家で!

 

余談だが、山下達郎もワム!も「クリスマスに失恋した」という歌詞なのに、何であんなにセックスのイントロみたいな扱いをされているのか……?

 

「クリスマスに向けて努力しないと、この歌みたいなことになるぞ!」と脅迫する歌だったのかも知れない。

 

■で、要はクリスマスって何をするの?

 

 

そんな狂乱も、田舎の男子高生には無関係。

 

そもそも、共学高であったとしても、周囲は見渡す限りの田んぼ or 畑しかないような田舎で、クルマを持たない高校生がどんなクリスマスを過ごしたらいいのやら。

 

当然デートの予定なんてない。かといって家族と過ごす気にもなれない。サンタさんが存在しないことも知ってしまい、プレゼントに対する期待感もない。

 

クリスマスなんて、男子高生にとってはただの平日だ。

 

……それでも、クリスマスが近づくと、妙にソワソワしてしまうのが哀しい。

 

「俺たちもクリスマス・パーティーをやろう!」

 

言い出したのはボクらの仲間内でもひときわアホなことでお馴染みのS。

 

クリスマスに追い立てられるような焦燥感を払拭するには、ひねくれたり無視したりするよりも、むしろ全開で盛り上がって迎え撃った方が吉!

 

……というような内容を、低IQなSなりの言葉で語った。

 

アホにしてはいいことを言う。

 

若干、星飛雄馬のクリスマス会のニオイがしなくもなかったが(知らない人は画像検索してみよう)、趣旨に賛同した男4人でクリスマス・パーティーを開催することに。

 

そうはいっても場所がない。

 

男ばかりで集まっての地獄のクリスマス会。とても親には見せられないから、誰かの家で……というわけにもいかない。

 

そこで目を付けたのが河原に放置されていた廃車だ。

 

ホームレス(という言葉も当時は一般的じゃなかったので「コジキ」とド直球で呼んでいたが)が住み着いているという噂のあった廃車のハイエース。

 

そのホームレスは数年前に死んだとか、施設に入れられたとかで、まったく見かけなくなっていたので、あそこは空室のハズだ。

 

ちょっとした『スタンド・バイ・ミー』感覚でハイエースに乗り込んだボクたちは、途中のスーパーで買ったロールケーキを取り出す。

 

近年流行しているような、フワフワだったり、クリームたっぷりだったり、オシャレだったりしない、ほぼカステラを丸めただけ状態のクソ安いロールケーキ(たぶん神戸屋の「スイスロール」)だ。

 

「クリスマスケーキ」を買う予算などないからロールケーキ! しかもひとり一本。

 

ボクらは何かに憑かれたようにロールケーキにかぶりついた。恵方巻き状態だ。

 

ロールケーキを一心不乱に食いつくし、我に返った。

 

「クリスマス会って、あと何やるんだっけ?」

 

ケーキを食ってお腹いっぱいになったら、もうやることがないのだ。歌うのか? プレゼント交換するのか? どちらも数分で終わっちゃいそうだ。

 

世のカップルたちが、ラブホの空き室を求めて徘徊する気持ちも分かる。クリスマスって、メシ食っちゃったら、あとはセックスくらいしかすることがないのだ。

 

コスプレだパレードだと、色々と要素の多いハロウィンに駆逐されちゃうわけだわ。

 

とりあえずあの日、ハイエースの中でロールケーキを恵方巻き食いしていたボクらは、バブル&クリスマスに浮かれる日本において、もっとも清らかな聖夜を過ごしていたと思う。